2010年1月に始まったDEAD POP FESTiVAL。2008年から2018年まで活動休止していたELLEGARDEN。ずっと交わらずにいたこの2つが、2025年、交わる。
SEが流れると、すでに満員のフロア前方にさらに多くのオーディエンスが詰めかける。そんなフロアをうれしそうに見ながら、細美武士(Vo, Gt)が「行こうぜ、DEAD POP!」と、まるで友達に言うみたいに声をかけ、「Supernova」を歌い始める。冒頭のパートを細美が歌い終えると、細美、生形真一(Gt)、高田雄一(Ba)の3人は勢いよくステージ前方まで飛び出し、高橋宏貴(Dr)も大きな笑顔。ステージの横には海が広がり、頭上には大きな空が広がる。抜けるような軽やかで伸びやかなポップパンクチューンが心地良い。ステージの後ろを飛ぶ飛行機や、空高く飛ぶ鳥も気持ちよさそうに見える。活動再開後の2022年に発表した「チーズケーキ・ファクトリー」でも大きなシンガロングが上がり、活動再開以降もELLEGARDENがロックシーンに根ざしていることを示していた。
細美が「俺ね、夏と海ってこの世で最強に好きなんだよね」と声を弾ませて、波乗りの歌「Surfrider Association」を気持ちよさそうに歌ったかと思えば、タイトな演奏で陽と陰をエモーショナルに見せる「Fire Cracker」を続けるなど、メロディアスな楽曲群で鮮やかに情景や心境を描き出していく。「風の日」ではシンボリックなギターリフを生形が弾くと、細美が歌わずともオーディエンスが自然と歌い出す。この曲は今から20年以上も前に発表された楽曲だ。彼らが活動していないかった間にELLEGARDENを知った人も多いだろう。2018年の活動再開以降に知った人ももちろん、いるだろう。それでも<雨の日には濡れて 晴れた日には乾いて(中略)次の日には忘れて 風の日には飛ぼうとしてみる>という普遍的なメッセージは、いつの時代も、すべての人……とは言わないけれど、ロックバンドやライブハウスを必要としている人たちの心には刺さるのだ。
そんなことを考えていると、ふと細美が「あれ見て。やばくね?」と一言。指差した先には、沈みゆく、強く輝く夕日。「俺たちみたいなクズ共の頭上にもああいう美しいものが輝くんだな」と感慨深く語る。そしてそれを今日一緒に見たかった(けど打ち上げが長そうだからと来てくれなかった)という妻に向けたラブソング「Strawberry Margarita」を、ひときわやわらかい表情で届けた。
細美はここで改めて口を開く。BRAHMANのステージでのMCを受け「世界線によっては俺がDEAD POPに呼ばれなかった世界線もあるわけだ。でもMAHが許してくれてここにいれてさ、それってすげーうれしいことだなと思って。よくよく考えたら、俺、この3人(生形、高田、高橋)にも許してもらってここにいるんだよ。俺はすごいいっぱい失敗してきたけど、失敗から学んでちゃんと前に進むから」と力強く語る。そして、それをステージで証明していくとばかりに「SiM、もしよかったらまた誘ってくれよ。どんどんカッコ良くなるから」と約束した。
その後に選曲したのは「ジターバグ」。<遠回りする度に見えてきたこともあって><間違ったことがいつか君を救うから>。MAHと仲違いをし(細美いわく「10:0で俺が悪い」そう)、そして許されて、2025年、SiM主催のDEAD POP FESTiVALのステージでこの曲を歌っている未来が、この曲を書いた当時の細美に見えていたわけではないと思うが、こうしてステージに立っている。彼らの音楽が普遍的なものであることが、そして彼らの音楽が彼らの生き様そのものであるということが、こうして一つずつ証明されていく。最後は、友人に捧げられた「Make A Wish」。フロアのオーディエンスはもちろん、スクリーンに映し出された袖で見ているバンドマンもみんなが歌っていた。この日のステージを見た多くの人の人の願いは、きっと、「SiMがまた、DEAD POP FESTiVAL にELLEGARDENを呼んでくれますように」だろう。
<セットリスト>
01.Supernova
02.Salamander
03.チーズケーキ・ファクトリー
04.Surfrider Association
05.Fire Cracker
06.風の日
07.Strawberry Margarita
08.ジターバグ
09.Make A Wish
文:小林千絵
写真:石井麻木