東扇島東公園に「お母さん、お願い」が響き渡り、ここからBRAHMANの時間が始まることが告げられる。祈る手を掲げて、その登場を待つ。昼過ぎのぬるい海風が左から右に抜ける。映像にはBRAHMANが歩んできた30年の軌跡が映し出されていた。
BRAHMANは現在、対バン全国ツアー『tour viraha』の真っ最中。生粋のライブバンドが、さらに己に磨きをかけまくり、本日のDEAD POP FESTIVALに降臨した格好である。
KOHKI(Gt)、RONZI(Dr)、MAKOTO(Ba)の順に次々にステージへ入場。最後に、全身ブラックで整えたTOSHI-LOW(Vo)が姿を現し、「時の鐘」からライブがスタートした。
「時の鐘」はMAHがBRAHMANを知るきっかけになった曲だという。DEAD POP FESTiVALに出演したのは2019年以来のことだが、そのときも1曲に「時の鐘」が流れ、イントロでバックヤードがワッと沸いたのが記憶に残っている。にしても、この4人がステージに立ってライブしている様にはまったく隙がなく、緊張感があって、どこか圧が感じられる。まぁ、それもそうだ。30年もの年月、決して止まることなく歩み続けているハードコアパンクバンドなのだ。言葉では説明できないような覇王色をまとっているのも当然のこと。何せ歌っているのはこの世に生きる鬼なのだ。
「DPF呼んでくれてありがとう。BRAHMANはじめます!」の挨拶から始まった「賽の河原」。そこからノンストップで「SEE OFF」、「SPECULATION」と続く。クラウドサーフは言うまでもなく止まない。その光景はライブハウスのそれ、そのもの。5曲目はアルバム『viraha』に収録されているMotörheadの「Ace Of Spades」。土着的なリズムにアレンジされたロックの大名曲でダンス&ダンス。TOSHI-LOWの「踊れ!」に合わせて、夏祭りではしゃぐようにフロアが左右に揺れていた。そんなダンスタイムを続けるように「BEYOND THE MOUNTAIN」に続き、フロアは止まることなくヒートアップしていくことになった。
「charon」のサビでの合唱を挟んで、続く「今夜」では中盤から、細美武士が登場し大歓声! この後にELLEGARDENが出演することもあってゲストで出演するかも? と考えていたオーディエンスも多かったのだろう。その期待感が爆発しいよいよ会場全体に一体感が生まれていくことになった。
パンクチューン「WASTE」もTOSHI-LOWと細美武士、2人のデュエット体制で届けられ、終曲にTOSHI-LOWのMCタイム。
「気象庁発表。川崎の天気、晴れ。夜、曇り。俺発表。川崎の天気、晴れ。夜―――血の雨が降るだろう。意味はわかるよね? ここからの流れのことだよ」。
2019年のときもそうだったように、DEAD POP FESTiVALにおけるTOSHI-LOWの愛あるMCタイムは実にショッキングである。口にするのも憚られるが、レポなので仕方ない。かいつまんで記しておく。
本日、TOSHI-LOWの口から語られたのは、我々がこれまで知ることのなかった「細美武士とMAHの13年戦争」なるものであった(恐怖!)。そして、今日のBRAHMAN(TOSHI-LOW)はレフェリーとして呼ばれておりジャッジを任されているとのこと(驚愕!)。その過失責任の割合が発表されたが、その詳細を書くと角しか立たないのと、関係各所に呼び出された上に仕事を失いかねないので即レポチームとしては割愛しておく。読者諸賢は現場にいた人から話を聞いていただきたい。続けて次のような内容へ。
「喧嘩っちゅうのは生きているからできること。今後も自分がそんなつもりでなかったとしても勘違いさせてしまったり、なぜか無視されてしまうこともあるだろう。だけど、その度に落ち込めばいい。何千回でも何万回でも。そして、何度でも立ち上がってこう言ってやればいい。順風満帆!」。
そういうことである。終曲後、サッとマイクを投げ捨ててBRAHMANはステージ袖へ。35分のハードコアパンクタイム。理解するのではなく魂で感じる時間であった。
やはり、DEAD POP FESTiVALにおけるBRAHMANのライブは特別な時間なのである。
<セットリスト>
01.時の鐘
02.賽の河原
03.SEE OFF
04.SPECULATION
05.Ace Of Spades
06.BEYOND THE MOUNTAIN
07.charon
08.今夜
09.WASTE
10.順風満帆
文:田島諒
写真:かわどう