「CAVE STAGEのトップバッター、どんなもんかと試すように観てる人もいるだろうけど、逆です。オレらが試しに来ました。SiMの年イチのイベントだろ? カッコいいところ、見せてみろ!」、そうダト・ダト・カイキ・カイキ(Vo/Ba)が言い放ったENTHはその言葉に違わぬ熱烈なパフォーマンスだった。
SE「☆愛♡醒☆(鬼ボンバイエMix)」が鳴った瞬間から乗り遅れてたまるか、と言わんばかりに観客が前へと押し寄せていくが、その期待感を超えるのがライヴシーンの最前線を走る彼らたる所以。初っ端からヘヴィなリフとリズム、地底から湧き上がるような歌声が合わさった「”EH”」、襲いかかる轟音の波「”TH”」、大きく揺らしながら天に昇るような浮遊感を生み出す「SCUM DOGS FART」を連続で投下し、CAVE STAGEは一気に彼らのムードに染め上げられていく。
客席から「暑い!」と声が届けば、「もっと暑くなるから、それぞれアレしてとけよ」と飄々としたダトらしい言い回しをした後、「(出演は)9年ぶり。オーディション枠で出て、それぶりです。めちゃくちゃ気合い入れてきました。お前らはどうだ!」と気炎を上げるのもまたらしいところだろう。
そこから一気にフルスロットルで「Gentleman Kill」を放てば、その勢いに呼応するように客席に広がるスカダンスにサークルピット。とてもじゃないが午前中の風景とは思えない熱狂だ。もちろん、そこでちょっと休憩を、なんてことを口にするバンドや観客はここにはいない。まだまだ、と歌い叫ぶダトやぶちアガり必死のリフを炸裂させたナオキ(G/Cho)の姿も印象的だった「HANGOVER」から、熱はそのままにゆとりを持たせる「WHATEVER」と続け、突き刺すように「Urge」と「BLESS」をドロップ。炎天下の中盤戦でも緩みはない。
そして、ここでコロナ禍おけるスタンスの違いでSiMと距離ができてしまったことを振り返りつつ、「とにかく、目指すゴールは一緒だったし…やっと、やっと、こうやって交われた」とダトが胸の内を明かし、「オレたちは自分を信じて良かったぜ! お前は何を信じる? 自分を信じろ!」という絶叫から「TEARS」を響かせ、ラストにセレクトされたのは伝家の宝刀「ムーンレイカー」だ。
もう、どこもかしこもグッチャグチャになるのだが、その終盤で暴動気味の客席に危険を感じ、一旦プレイを止める。何かがあってからでは遅いわけで、まさにクライマックスというときではあったが、その決断は早かった。そこから怪我人がいなかったことを確認すると「1曲やる時間がなくなっちゃったんで、飲んで終わります」と、ダトとナオキがテキーラを煽り、「ありがとう、ENTHでした!」と締めくくり。まさかの緊急事態、ちょっとぐらい持ち時間をオーバーしても許されそうなものだが、そこには甘えることはなかった。ENTHだからこそできる技ではあるが、また会える、一緒に遊べることを信じているからに違いない。
<セットリスト>
01 “EN”
02 “TH”
03 SCUM DOGS FART
04 Gentleman Kill
05 HANGOVER
06 WHATEVER
07 Urge
08 BLESS
09 TEARS
10 ムーンレイカー
文:ヤコウリュウジ
写真:鈴木公平