雨がドーンと降ったりする日もあれば、まったく降らずとんでもなく暑くなる日があったりと、まるで綱引きをしているかのような梅雨前線に翻弄されている6月最終週の土曜日。今年も始まる、DEAD POP FESTiVAL。2日間にわたる熱いステージではどのようなドラマが起きるのだろうか。ワクワクとドキドキがシーソーしている。そんなみんなの期待が渦巻くステージに、オープニングアクトとして立つのは、Hammer Head Shark。今日に先駆けて開催された、DEAD POP FESTiVALの出場権をかけたオーディションを見事に勝ち抜いた2018年に結成されたロックバンドだ。自分なら絶対に緊張しまくってガチガチになるだろうなとステージを観れば、そんなガチガチ感は微塵も感じさせずに、彼女達はSEなしで颯爽とCHAOS STAGEに現れた。
オーディエンスはじっと始まるのを待っている。こうして始まった1曲目は「魚座の痣」。楽器の音が鳴った途端、バンドとオーディションのスイッチがオフからオンに切り替わった。そうだ、これがライブで、DEAD POP FESTiVALだ。生の音が東扇島へ流れてくる。それを操るHammer Head Sharkのサウンドは、まるで魚のように動いていく。まるで観ているこちら側の心を深海へと引き摺り込んでいくように深い音だ。ながいひゆ(Vo/Gt)の魂を震わせているかのような声が、より深いところから聴こえてくる。続く2曲目は、先ほどは打って変わる「アトゥダラル僻地」。ヘビーなバンドサウンドに、ガラスのように割れやすくも美しい歌声。オーディエンスはすっかりHammer Head Sharkの海に引き込まれている。3曲目は「しんだことになりたい」。曲がこちらも叫びたいほど心にグサっと突き刺さってくる。何も考えず音に溺れたくなる。ながいと藤本栄太のギターの音が、周りの空気を吸い込み深いところから徐々に水面へと浮上してくるようで、心地がいい。それでいて、ながいの体から歌詞がまるで言霊のように出てきて、オーディエンスそれぞれの体に入り込んでいく感じがして、心をつかんで離さなくなる。頭で鳴るというよりも心の中で音が鳴っている。そんな印象のHammer Head Sharkが作る音世界だ。
曲が終わると、MCでドラムの福間晴彦が「ここ(=DEAD POP FESTiVAL)でやれることをずっと昔から妄想していました。嬉しいです」と語り、ながいが「そこにいてくれてありがとう。ここに立ててとても嬉しいです」と、ともにこのステージに立てたことへの感謝を伝えながら、ラストの「たからもの」へとそのまま流れる。深いところで鳴っていた1曲目。水面を目指すかのようにかき鳴らした2曲目。水面ぎりぎりをぷかぷか漂うにギターがキラキラしていた3曲目。そして水面から空に向かって音が広がっていくラスト曲。<ずっと覚えていて いつも君の味方>の歌詞にサウンドが胸のドアをノックしていた。
バンドの名刺とも言える1stアルバム『27℃』を、ちょうど3日前にリリースしたばかりのHammer Head Shark。DEAD POP FESTiVALが始まったように、彼・彼女達のバンドストーリーも幕を開けたばかり。これからさらにさまざまな経験を重ね、自分達のクオリティに磨きをかけていく。まさに今日この日のライブは、これからのHammer Head Sharkが大きくなっていく道の大切なひとコマになったはずだ。これからどんな色と音を塗り鳴らし重ねていくのだろう。
<セットリスト>
01.魚座の痣
02.アトゥダラル僻地
03.しんだことになりたい
04.たからもの
文:相沢修一
写真:半田安政