THE ORAL CIGARETTES「DPFというホームで生まれた奥義ウォール・オブ・デスを今年も!」

  • 2024年6月29日
  • 0629
    • THE ORAL CIGARETTES

気づけば夕陽がCAVE STAGEを照らすマジックアワー。DEAD POP FESTiVAL 2024 DAY.1、クライマックスでございます。これから登場するのはTHE ORAL CIGARETTES。彼らにとってDPFはもはやホームであり、オーディエンスも、そんな常連となったオーラルを期待いっぱいに待ち望んでいた。

そんな歓迎ムード120%の中でSEが流れ出すと一斉に立ち上がるリフト群。下手からメンバーが威風堂々と登場。『あれ?』と思ってよくよく見てみると、あきらかにあきら（Ba, Cho）が手にミニ・刀（おもちゃ）を手にしている。それをフロアに差し向けるという挑発行為! まさしくサムライ・ジャパンたる不敵な振る舞いである。いつもの口上の合間にも、ちょっとした小噺を挟んで場を和ませつつ、「早いなー」と左右いっぱいに広がるリフトを指差して笑いかける山中拓也（Vo, G）。早くもこの日のDPFがオーラルの手中に落ちた瞬間であった。

今や遅しと待ち構えるオーディエンスに投げかけたのは「GET BACK」!  古くからの名曲がいきなりきたことにどデカい歓声で応じるフロア。つづく「BLACK MEMORY」のサビでは山中の「SiMに向けて思いっきり声を聴かせてくれ!」の煽りから全員シンガロング。それに対して「聴こえんなー」とさらに煽る、煽る! ふと上手に目を向けると、あきらかにあきらが鈴木重伸（G）の頭をヨシヨシしている。『なんで!?』と思ったのだが、これも彼らのホームであるDPFだからこそ成せることだ。自分たちのワンマンライブのように落ち着き払って完全無敵なアクトを披露し続けていた。

次曲「BUG」で生み出したのは今日1番のダンスフロア。中毒性のあるシンセが鳴り響くと一斉にクラップハンズが巻き起こり、そのまま会場中にモンキーダンスが伝染すると東扇島東公園がユラユラ揺れるほどだった。熱しきったフロアへ「暗い曲でも飛んでくる景色が見れるかな?」と、今日のセットリスト1番のメンヘラ曲だという「接触」に。果たしてサビでは怒涛のクラウドサーフが巻き起こる事態になり、何もかもが完璧なライブとなっていた。

MCタイムでは「外タレのSiMのトリセツを教えます」と、こともあろうかSiMメンバー全員をいじるという展開へ。特に「ドラムの人にはバナナでも与えておいてください」という雑なトリセツには吹き出してしまった。先輩をいじるという傍若無人な行為。これもまたオーラルとDPFが紡いできた絆そのものであるのだ。

そんな話をしながらスルスルとフロアへ乗り込んでいく山中。どうするんだろう? と思っていたところ「全員かかってこい! ここまで来てくれ!」と「狂乱 Hey Kids!!」。山中目掛けて飛び込んでいくダイバーにも手を差し伸べていた光景は印象的であり、オーディエンスへの愛を感じさせた瞬間でもある。

もう、これ以上の盛り上がりはないでしょうよ。と思っていたのだがクライマックスは、この後の「Red Criminal」だった。昨年のDPFで1曲目に演奏した曲であるが、そこでオーラルは「人生初ウォール・オブ・デス」を達成することになったわけだ。

その奥義を今年も発動させることに。イントロの時点で大きく2つにフロアが分かれ、怒涛のウォール・オブ・デスが発生。中盤のパートで、山中は「お前らがいたからできた! DPFのお客さんに感謝! SiMに感謝!」と叫び、十分にウォールができる時間を設けると、前方だけではなく上下中段のエリアなど、あちこちにウォールが出来上がっていった。そんなウォール街がオーラルの演奏で一気にカオスを生み出していく。まさしくぐっちゃぐちゃになったフロアへ「あと20秒ある!」という言葉から「Mr.ファントム」のイントロのみをボンッと投下。「終わり!」とひと言告げてメンバーは颯爽と舞台を去っていった。ちなみに、あきらかにあきらは最後までミニ・刀（おもちゃ）を手にしていた。気に入ったのかもしれない。

DEAD POP FESTiVALが東扇島東公園で開催されるようになってから今年で9回目。SiMが大切にしながら作り上げてきたフェスには歴史と絆が積み重なっている。その中で、何度も出演するうちに物語が生まれるバンドが出てくる。DPFにおいて、そんなストーリーを作ったのがオーラルだ。最初はCHAOS STAGEからのスタート。CAVE STAGEの出番も早い時間からトリ前まで、さまざまな位置を体験してきた。そんなSiMとの繋がりによって、DPFはオーラルにとってのホームとなり、双方にとってかけがえのない居場所になったのだと思う。オーラルがCAVE STAGEのSiM（トリ）前に出演したのは2018年以来。あのときは、今日のようなリラックスしたMCはなかったし、ウォール・オブ・デスもなかった。それが今日のような狂乱&混沌タイムである。DEAD POP FESTiVALに生まれた、オーラルとSiMのストーリーを感じさせられる時間であった。

＜セットリスト＞

  1. GET BACK
  2. BLACK MEMORY
  3. BUG
  4. 接触
  5. 狂乱 Hey Kids!!
  6. Red Criminal
  7. Mr.ファントム（イントロのみ）

文：田島諒
写真：鈴木公平