「ちょけてねえか!? やるなら100%で来い!」Saucy Dogが2度目の出演で見せつけたロック・バンドならではの向こう意気

  • 2024年6月29日
  • 0629
  • Saucy Dog

アウェイを感じながらも自分たちらしさを貫き、DEAD POP FESTiVALに受け入れられたという確信を得た前回から2年。この日、せとゆいか(Dr, Cho)が語ったところによると、前回は逆オファー、つまりSaucy Dog側から「出たいです」と言って、出させてもらったという、しかし、今回はSiMから出演オファーをもらって、出演が決まったそうだ。

「ちゃんとオファーをもらって、ここに立つことができました。めちゃめちゃうれしいです!」と語ったせとをはじめ、メンバー全員がこの日を楽しみにしてきたことは間違いないと思うが、それ以上に観客のほうがSaucy Dogのライブを楽しみにしていたことは、メンバー3人でシンガロングを重ねたアンセミックなロック・バラード「現在を生きるのだ」から、「Saucy Dog始めます!」と石原慎也(Vo, G)が改めてライブの開始を宣言しながら繋げた軽快なロックンロール「夢みるスーパーマン」で早速、観客がダイブを始めたことからも明らかだった。

ダイバーの数は、なんとフォーキーなバラード「シンデレラボーイ」でもさらに増え、そんな観客の盛り上がりはそこからたたみかけるように繋げたガレージ・ロック・ナンバー「poi」でモッシュサークルに発展していった。自分たちのライブでダイブが起きたことに戸惑ったのか、「お遊びじゃねえぞ。Saucy DogにはSaucy Dogの楽しみ方があって、君たちには君たちの楽しみ方があって、それはそれでいいんだけど、ちょけてねえか!? やるなら100%で来い!」と石原は声を上げた。

もしかしたら、ダイブおよびモッシュする観客の側にも「Saucy Dogのライブで」という躊躇があったのかもしれない。決してダイブは推奨しないけれど、やるならとことんやってくれ。そうしないと、ライブの盛り上がりが中途半端になる。たぶん、石原はそんなことを言いたかったのだと思うのだが、その気持ちはしっかりと伝わったようだ。

そこから繋げた軽快なロック・ナンバー「ゴーストバスター」では、観客が「100%で来い!」という言葉を受け止め、特大のモッシュサークルが出現した。石原がシャウトに激しい感情を込める。

「大丈夫? モッシュ命みたいな奴ら、楽しんでるの? 楽しんでるんだったらいいんだけどさ(笑) 楽しんでない人は逃げてね」(石原)

DEAD POP FESTiVAL2024の出演アーティストを対象にしたアンケートの「SiM以外で気になるアーティスト」という問いに「なし」と答えたことがネット上をザワザワさせたことについて「空欄で出した俺が悪かった。想像力が足りなかった。全員に決まってる。楽しみに来ました。そこはみんなと一緒」と釈明した石原は「今日、やさしい先輩たちに『大丈夫だった?おもしろかったけど』と言ってもらえて、何も臆することはない。楽しんで、いいライブしていけばいいと思いました」と続け、「ここで見ているあなたに100%届けたいと思います」と言いながら披露したのが、ネット上の誹謗中傷をテーマにしたバラード「怪物たちよ」だったのだからニヤリとせずにいられなかった。

前述した「やるなら100%で来い!」も含め、そんな向こう意気も明らかにラウド系ではないSaucy DogがDEAD POP FESTiVALに迎えられる理由の1つなのかもしれない。

タイトにリズムを刻む秋澤和貴(Ba)のベースから始まったラストナンバーは「優しさに溢れた世界で」。

「歌える奴は歌おう!」と声を上げた石原に応え、オチサビでは観客のシンガロングがCAVE STAGEの空に響き渡る。気がつけば、熱い雲の間から太陽の眩しい光が差しこんでいた。

「またどこかで会えたら一緒に音楽をやろう!楽しかったよ!」とこの日のライブの手応えを言葉にしながら、ステージを降りる直前に石原が言った一言がふるっていたので、最後に記しておきたい。

「『シンデレラボーイ』でダイブ、モッシュはやめろ!」

最後の最後まで自分を貫く石原だったのだった。

 

<セットリスト>

1.現在を生きるのだ。
2.夢みるスーパーマン
3.シンデレラボーイ
4.poi
5.ゴーストバスター
6.怪物たちよ
7.優しさに溢れた世界で

文:山口智男
写真:鈴木公平