音楽フェスの魅力ってなんだろう？ 仲間と一緒に味わうフェス飯や新しい音楽との出会い、そして開放的な空間で浴びる爆音でもいい。でもそんなことよりもっともっとたまらない体験がある。それをGUMXのライブを観て考えさせられた。それって最高に好きなアーティストの最高にカッコいいライブを生で楽しむことだと思う。しかもそれが自分の想像を遥かに超えてきた時はたまらないんじゃないかな。しかもエモい演出まで添えられていたら、それはもう一生モノの宝になるはず。
暑さがライブを重ねるたびに増していくDPF初日の5番手として、韓国のハイスタことGUMXがステージに登場した。DPFへの出演は初だったんだけど、この日は出だしから全力疾走。まずは「Are You Fxxkin’ Ready?」の掛け声とともに「Trash Revolution」からスタートし、「The Seound Of Our Love」から『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』の劇中挿入歌のカヴァーでもある「Komm Susser Tod」に、「Buds」と次々とでためらなスピードでスタートダッシュを切る。このスピーディな展開はフロアにいる私達のあらゆる神経を根こそぎ揺さぶって、あっという間にGUMXワールドに連れ去っていく。
怒涛のパンクロックラッシュを見せたGUMXは、MCでYongwon（G&Vo）が話しかける。「We Are Fxxkin’ TOMODACHI!! 政治、宗教、関係ナイ！ パンクロックしよう！」。これを聞いて思わずグッときた。そうだ、音楽に国境も政治も関係ない。カッコいいのはカッコいいんだ！ とにかく今を楽しもうじゃないか。ここからさらにただでさえ早いギアをもうひとつ上げてくる。エモーショナルなサウンドが魅力の「Pink Lips」。感情爆発と表現したいこの音は、そのままひとつの塊となってフロアを埋め尽くすオーディエンスに音の弾丸となり突き刺す。胸を撃ち抜かれたオーディエンスはメンバーから目を離さず、クラップハンズにダイブと思い思いにリアクションを返していく。「GUMXかっこよくない！?」そんな声が聞こえてきたようで嬉しくもなる。吹き荒れる風とともに彼らのスピーディな楽曲が、キッズのTシャツをなびかせている。こういったライブはスマホやTVの画面を通じては決して味わうことができないものだ。そしてGUMXは2020年にメンバーを入れ替えリスタートしているんだけど、その再び歩みを始めた彼らのポジティブな思いが詰まった「The Answer」が炸裂。ステージ上で全力で歌い叫ぶ姿に、背筋がゾクゾクっと痺れたオーディエンスは少なくないはず。少なくとも私は強烈に食らった。
それからYuto（Dr）がMCでSiMへの感謝を口にし、Yongwonが日本のパンクシーンへのリスペクトを伝え、「Green Freakzilla?」から「Perfect」とスピーディに展開し、ラスト「Hymn To Love」に。ベテランキッズにはどこか懐かしく、思春期ど真ん中のキッズには新鮮に聴こえる曲にオーディエンスはまぶしいくらいの笑顔で応えていた。そしてステージ横には、SiMのメンバーはもちろんなんだけど、Yongwonと同郷のPROMPTSのメンバーがいたのもなんだかエモい光景だった。
今日のこのステージに辿り着くまでに、誘惑、疑惑、迷惑といろんなことが、GUMXのバンドライフにはあったことだろう。けれども、どんなことにも惑わされず確固とした意志を持つYongwonがいたからこそ、こうやってこの日GUMXは、DPFのステージに立っているのだ。過去にとらわれず、感性を磨くことを怠らず、新しい挑戦を続けきたGUMX。私達がバンドに取り憑かれる理由のひとつに、ライブが言葉の超える瞬間がある。その壁を越えることの喜びを、GUMXは私達に教えてくれた。
＜セットリスト＞
- Trash Revolution
- The Seound Of Our Love
- Komm Susser Tod
- Buds
- Pink Lips
- The Answer
- Green Freakzilla?
- Perfect
- Hymn To Love
文：相沢修一
写真：半田安政