京都のアンダーグラウンドからカオスを持ち込んだ、世界レベルのおとぼけビ〜バ〜

  • 2023年6月25日
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そういえば音楽フェスの醍醐味とは、“解放”だったことを思い出す。コロナ禍のソーシャルディスタンスもあってか、そんなあたりまえのことを忘れてしまっていた。それはフェスだけに限らず、ライブハウスでもそうで、実際に現場に足を運んで解放することでしか得ることができないものがあって、それが自分の中に強烈な思い出として蓄積されて、退屈な日常をまた鮮やかに彩ってくれるんだと思う。そんなハードというかカオスな“解放”を味わわせてくれたのは、「DEAD POP FESTiVAL」初参加となる、おとぼけビ〜バ〜の4人だ。事前のアーティストコメントの「SiM以外で気になる出演バンド」で、数多くのアーティストがおとぼけビ〜バ〜を挙げていたので、集まったオーディエンスの期待は高まっているようだった。

リハをそのままに、派手で艶やかな衣装をまとった、あっこりんりん(Vo,Gt)、よよよしえ(Gt,Cho)、ひろちゃん(Ba,Cho)、かほキッス(Dr,Cho)によるライブがスタート。よよよしえが「We are おとぼけビ〜バ〜! Are You Ready? ビーバーじゃないほう始めます!」と宣言し、「ヤキトリ」「あきまへんか」を放り込む。続く「ハートに火を付けたならばちゃんと消して帰って」では、ドラムのかほキッスの強烈な煽りに、無数のクラップハンズが起こる。この容赦ないステージングとスピーディなナンバーで、オーディエンスの脳みそはまるでハンマーでぶっ叩かれたような感覚に(しかも曲のタイトルもすごすぎる破壊力!)。さらに何がすごいって、とにかく予想ができないんです。あっこりんりんは自らのオシリをペンペンするわ、歌っている歌詞はぶっ飛んでいるわ、コーラスは絶叫もしているわ、そしてものすごい数の音が目まぐるしく変化していくしって、体感速度でいったら30分が5分くらいに感じてしまうほどの油断できないパフォーマンス。そう、観る者をまるごと自分たちのフィールドに持ち込む超ストロングスタイル。これも彼女たちが、世界で音を鳴らしてきた経験(5月にもUKツアーを完走!)があるからだろう。怒涛の曲展開から「いまさらわたしに話ってなんえ」を終え、小休憩。

「ありがとう。京都のアンダーグラウンドからやって来ました、おとぼけビ〜バ〜です。どうぞお見知りおきを」と、よよよしえのバンド紹介を挟んで「ジジイ is waiting for my reaction」に(やっぱり曲タイトルがすごい)。ノイジーなサウンドと耳をつんざくようなハイトーンヴォイスが強烈だ。ちなみにかほキッスは、骨折で左足にギプスをしていたんだけど、そんなことを微塵も感じさせないアグレッシブな演奏だし、ひろちゃんはベースを指で弾いていたかと思えば、素早くピックに持ち替えていたりと、とにかく破天荒なライブに飛ばされまくる。中盤は「アイドンビリーブマイ母性」で、これまたカオスすぎる世界へと誘う。

最初は彼女たちが放つエネルギーに呆気を取られていたキッズたちも、思い思いに楽しんでいる。ここでよよよしえが「とうとう景色が地獄に見えてきました。次の曲は地獄の王子のアラーム曲です」と、「サラダ取り分けませんことよ」をプレイ。変則的なリズムかつ中毒性のある展開にじっと観てしまった。さらにYサインで盛り上がった「孤独死こわい」(これまたタイトルが半端ない!)を放り込みながら、ラストは<合言葉は! セックス・しば漬け・ロックンロール>のフレーズが強烈な「あなたわたし抱いたあとよめのめし」で締めての全14曲でフィニッシュ。びっくりした曲数とパフォーマンスにオーディエンスは終始、虜だった。

忙しい日々では、「今日が終わらないで!」と考えることはあまりない。でも、そんなことをひさしぶりに感じることができた、おとぼけビ〜バ〜のライブ。もっとこの時間が続いてほしいと思わされたステージだった。しばらくはこの解放の余韻から抜け出そうにない。

<セットリスト>
01. ヤキトリ
02. あきまへんか
03. ハートに火を付けたならばちゃんと消して帰って
04. シルブプレ
05. Love Is Short
06. いまさらわたしに話ってなんえ
07. ジジイ is waiting for my reaction
08. アイドンビリーブマイ母性
09. もうその話なんべんもきいた
10. 携帯みてしまいました
11. サラダ取り分けませんことよ
12. リーブミーアローンやっぱさっきのなしで
13. 孤独死こわい
14. あなたわたし抱いたあとよめのめし

文:相沢修一
写真:半田安政