「DEAD POPにポップ・ミュージックを鳴らしにきた!」バラードでライブを締めくくったSUPER BEAVERの筋の通し方

  • 2023年6月25日
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前日、SiMのMAHが言った「ライブハウスのいろいろなことをわかっているバンドを揃えた」という意味では、SUPER BEAVERもまさにそういうバンドではあるけれど、ほぼラウド系のバンドが続いたと言える2日目のCAVE STAGE、しかもSiMにバトンを渡すというポジションで、SUPER BEAVERがどんな戦い方をするのか? そんな興味とともに臨んだところ、「SiM並びにお集まりのみなさんに最大級の敬意を! DEAD POPにポップ・ミュージックを鳴らしにきました」と渋谷龍太(Vo)が開口一番、言い放ったのは、ある意味、DEAD POP FESTiVALに対する宣戦布告だった。

それは楽器隊の3人がサウンドチェック代わりのジャム・セッションを繰り広げながら、「DEAD POP、まだ元気残ってる? イエー!イエー!後ろまで聴こえてます?」と柳沢亮太(Gt)が観客を煽って、フロム・ライブハウスの向こう意気を見せつけていたことからも明らかだった。

前述した渋谷の宣戦布告から、柳沢が不穏にコードをかき鳴らしながら、演奏になだれこみ、「グラデーション」「青い春」と新旧のアンセムを披露した直後に渋谷が言った「勇気出してきたんだからもっと拍手もらってもいいですか?もっと!もっと!」という言葉からも、彼らがこのステージを1つの挑戦と考えていたことが窺える。しかし、だからと言って、彼らはDEAD POP FESTiVAL、およびこの日のCAVE STAGEの流れに与するようなことはしない。

「DEAD POPは仲いいバンドばかり。みんな一度は対バンしたことがあるんじゃないかな。だけど、仲良しこよしをしに来たわけじゃないし、DEAD POPを最高にしようも違うと思う。俺達は俺達に与えられた35分を、SUPER BEAVERの35分にしようとやってきました。それがSiM、DEAD POP、そしておまえに対する筋の通し方だと思う!」(渋谷)
そこから再び「ひたむき」「東京流星群」と新旧のアンセムを立て続けに披露。大音量の演奏で圧倒する代わりに渋谷の伸びやかな歌声とともに柳沢、上杉研太、藤原“35才”広明がそれぞれに奏でる音色もしっかりと届けながら、ダイブやモッシュとはまた違うアンセミックな光景を作り出す。彼らのライブではクライマックスに演奏されることが多い「東京流星群」では、「歌え!」と呼びかけるメンバー達に応え、観客がシンガロング。ついにはダイバーまで出現する。
それを見た渋谷が快哉を叫ぶ。


「楽しそうでよかったです! お互い(コロナ禍を)戦い抜いてきた結果。それをSiMがこんなふうにまとめてくれたり、いろいろな人がこんなふうに集まって、あなたを含めて、1日ができあがっているってと思ったら、やっぱりすごいことだよね」
しかし、この日一番の彼らの挑戦は、やはり6月28日にリリースする「儚くない」というバラードを最後に持ってきたことだろう。
「東京流星群」の盛り上がりを、まだ他にもあるシンガロング必至のアンセムでさらに大きなものにしてもよかった。しかし、そうせずに敢えてバラードを持ってきたところに「DEAD POPにポップ・ミュージックを鳴らしにきた」と宣言したSUPER BEAVERの筋の通し方を見た。因みに、その「儚くない」は、純粋にめちゃめちゃいい曲を作ろうと思って、その思いを見事まっとうできた自信作だという。
「始まったからには終わりがある。それはライブだけに限らない。人の人生もそうで、始まったからには終わる。じゃあ、まあいいかで片付けられないのが人間の人生。長い目で見て、たったひとりの人生、これっぽっちしかないと人は言うかもしれないが、こっれぽっちの人間にとっては、さまざまな形をしてて、大事な人がいて、めちゃくちゃ死んでほしくない人がいたりする。そんなものを儚いなんて一言で片づけられてたまるかと思う。傍から見て、儚いなら自分でどう変えていくか。俺はできたら今日のDEAD POPみたいにあなたと一緒に生きていたいと率直に思いました。SiMに大きな拍手を。DEAD POPに大きな拍手を。あなた自身に大きな拍手を」(渋谷)
そんなふうに曲に込めた思いと、その曲をラストナンバーに選んだ理由をていねいに語ってから披露したバラードを、じっと聴きいらせたエンディングは、ある意味、フェスのクライマックスとは違うものかもしれない、しかし、観客の気持ちをぐっと鷲掴みにしたという意味では、「DEAD POPにポップ・ミュージックを鳴らしにきた」と宣言したSUPER BEVAERなりのクライマックスなのだったと思う。

<セットリスト>
01.グラデーション
02.青い春
03.ひたむき
04.東京流星群
05.儚くない

文:山口智男
写真:鈴木公平