「安心してこの背中についてこい!」 DEAD POP FESTiVAL 約束を果たし未来へ

  • 2023年6月25日
  • 0625

『DEAD POP FESTiVAL 2023 -解-』。今年の2日間は、“解”が意味するものを1人1人が確認する場所だったのじゃないかと思う。それは解放、解禁であったり、人によっては何らかの解答にもなっただろうし、これで解決したと思った人もいただろう。
肝心なのは、この2日間は、対・コロナ禍戦線との真っ向勝負のすえ、ついにSiMが、DEAD POP FESTiVALが勝利を確実にもぎとったということだ。
本日を経て、2023年6月24日、25日は、僕らの人生年表に刻まれる戦勝記念日になる。見えない敵軍は手強く、我々は理不尽を耐え、虐げられて抑えつけられても文句を言わず、黙々とマスクをし、ルールに逆らわず真夏のフェスに通い、次第にルールに則って声を挙げはじめ、いよいよモッシュとダイブができる場を勝ち取ったわけだ。MAHが1日目に話した通り、“堂々と”今年のDEAD POP FESTiVALで、それを実現してみせたのだ。

2日間に渡った“解”の儀式を終える『DEAD POP FESTiVAL 2023 -解-』のSiM。あのサイレンと共にメンバーが続々と降臨し、「灼熱の地獄から、暗黒大魔界! これこそ本当の地獄の始まり!」(MAH)という宣言から「The Rumbling」の轟音とクワイヤと共にライブがスタート。この曲のサビをマスクなしでモッシュしながら大合唱できる日は念願だった。その望みを昨日に続いて叶えつつ、「DEAD POP、まだ足は動くか? じゃあ跳べ!」(MAH)の煽りで「DiAMOND」を聴きつつダンス。特にビートダウンから続くパートのフロアの息の合い方は驚くほど見事にピッタリだった。続いて、「伝家の宝刀!」 イントロからどよめきが起こると同時にサークルピットが巻き起こった初期の名曲「TxHxC」を投下! 終曲後、MAHは次のように話した。

「この2日間、モッシュ、ダイブ、大声での大合唱がないっていうのは不自然だなって。それを再認識しました。好きな曲がかかっているのに我慢して小さい枠で黙っていなくちゃいけないなんて、やっぱり不自然だったよな!? この、あるべき姿に戻すのに、3年かけた。かかったんじゃない“かけた”んだ。この2日間で言えることは1つだけ。俺についてくれば大丈夫なんだよ! 安心して、この背中についてこい! これからもよろしく!」。

2年前の『DEAD POP FESTiVAL 2021』の2日目のMCで、MAHはオーディエンスに向かって、強い口調で「お前らのここは、俺らが絶対守ってやるからな」と約束してくれた。昨年の『DEAD POP FESTiVAL 2022』では、「来年のDEAD POPは自由に遊べるように、最後まで闘い抜こう」と意思表示をしてくれた。果たして、その約束は完璧に完遂されて、こうして僕らは笑顔になれたんだ。

「気分がいいから昨日とは違う新曲やるよ。SiMにしかできないだろうって曲」と紹介されたのは「KiSS OF DEATH」。“死のキス”だなんて、実にSiMらしくてロマンティックな曲名だ。これがまた、ヘヴィなイントロから一転、まさしくSiM! としか形容できないレゲエパートでダンスしたくなるナンバーだった。演奏されたのは昨日と同じくワンコーラスだけ。早く続きが聴きたくなるSiM節たっぷりの本楽曲。次のアルバムに収録されるようで、昨日披露された「BBT」と合わせて、早く聴きたい。

「まだ活きが良さそうだな。気に食わねぇな!」とくれば、そう「KiLLiNG ME」!! ビートダウンパートでは、フロアを座らせようとするも、オーデェンスでパンパンなエリアではそれが叶わず、昨日に引き続きファンをステージに上げて弾かせることに。今宵の幸運なヤロウは“サトケイくん”。しっかりとリフを弾き上げ、SiMと共に大いにオーディエンスを沸かせていた。
続いて、必要なのは愛だと歌う「Life is Beautiful」。この楽曲に入る前に、MAHは「こうして最高の日に出会うと、つい今日死んでもいいって思っちゃうんだけど、そんなこと考えちゃダメだ。見苦しくても、1つでも多くステージに上がってお前らのことを待っておかなくちゃいけないからな。クソみたいな人生でも1秒でも1分でも長く生きてやろうって今は思っています」と話した。生きていればイヤなことだってあるが、乗り越えなくては喜びはない。そんな風に背中を押してくれる。我々のことを待っていてくれる。なんて優しい悪魔の囁きだろう。この瞬間の言葉と演奏に鼓舞された人は少なくないはずだ。

そしてMCタイム。昨日に引き続き、「セキュリティは肉の壁じゃないからね! 真のヒーローはセキュリティのみなさんです! せーの!」で『ありがとうございました!』の大きな感謝をステージとフロアの間へ投げかけた。

続いて「朝からいろんなキラーチューンがあった。よい曲ばっかりだよ! でも、SiMが1番だよな! 1番のキラーチューンは<oh na na na>! もう我慢しないでいいぜ! 最初から全力で120%でこい!」と来れば、お待ちかね! この歌を全力でシンガロングするのを心待ちにしていた人も多かっただろう、「Blah Blah Blah」だ。実際にシンガロングはすさまじく、この2日間でもっとも大きな合唱が東扇島に響き渡ることになった。

本編ラストは「まだ、全力で歌ってないだろ! この曲、みんなで歌うとヤバいぜ!? 歌え!」でスタートした「BASEBALL BAT」。みんなで歌ってモッシュにツーステップにダイブ。リリースされたのはコロナ禍の真っ只中だから、ようやくこの曲本来の魅力を堪能できたわけだ。これがめっちゃ楽しかった。みんなも絶対にそうだったと思う。

舞台は暗転から点灯でアンコールタイムへ。

「普段はいろんなジャンルのアーティストを呼んで、みんなに出会ってほしいと思って、そういうフェスを目指していたんだけど、今年はどうしてもロックシーン、ライブシーンをわかっている人たち、そしてそのお客さんたちの来てほしいと思ってオファーしました。全員、快諾でオファーを受けてくれてありがとうございます! 形式上、俺が、俺がって言ってたけど、そんわけない。みんなのおかげで成り立っていると思います。そして、来週の京都大作戦へ!」。

今回の『DEAD POP FESTiVAL 2023 -解-』に参加した面々とシーンの今後について、ライブ本編後、アンコール前にそう話したMAH。そして、DEAD POPが開催できたって事実をもっと広めてほしいと続けた。
そこから「ロックシーン、ゼロから1から、100を超えて120、2019年のアレを超えて新時代! 新しい時代いヤバい! そんな感じにしようぜ!」と叫んだ。

次の約束は、未来に新たなヤバいロックシーンをSiMと共に作ること。それを、この場にいた全員で胸に刻み込み「JACK.B」へ。ラストのラストはC.C BOYSことMasato(coldrain)とKoie(Crossfaith)を招いての大デス・ヴォイス大会で、「誰が何と言おうとウォール・オブ・デスと言えばこれでしょう! 地獄見せたらんかい!」で「f.a.i.t.h」に。

こうして2日間を過ごしてみると、ダイブ、モッシュ、シンガロングが禁止されていた日々がウソみたい。だけど、現実としてコロナ禍がシーンに与えたダメージは大きいことが、ピットを見ていて感じ取れたし、久々にダイブした人も実感しただろう。やっぱり、あの悪夢みたいな3年間は現実にあったことで、そこで壊れた日常をベースに、これまたMAHが初日に語ったように、シーンをイチから作り上げていこうってことに繋がる。

この2日間、どのバンドもやりすぎなくらいにオーディエンスを煽り、檄を飛ばし、存分に甘やかして暴れさせていた。そして、シンガロングの声が聞こえてきたり、グルグルと走り回る我々の姿を見て、すごく人間味に溢れた笑顔になっていた。まるで友達にフと向けるような自然体の表情だったと思うし、どのバンドマンもみんながそうだった。ステージに立つバンドマンが喜ぶのは、今年のDEAD POPに関しては、我慢しない僕らの姿であったのだろう。“かかってこい” “もっと声を出せ” “回れ、踊れ” “ウォール・オブ・デス”。どれも3年間、封印されていたように聞かなかった言葉だ。その絶叫を、この2日間、何度も浴びることができて、それに応じてピットを作ることの喜びは格別だった。

来年以降のDEAD POP FESTiVALはどうなるのか。
MAHが「海外ツアーもしなくちゃいけなくなっちまったけど、何とか来年もやるぜ!」と話すように。僕らも毎日を大切に。好きなものを守って育み、思いっきり遊べる場所をもっともっと大きく楽しい場所にしていきたい。

<セットリスト>
01.The Rumbling
02. DiAMOND
03. TxHxC
04. KiSS OF DEATH
05. KiLLiNG ME
06. Life is Beautiful
07. Blah Blah Blah
08. BASEBALL BAT
(Encore)
01.JACK.B
02.f.a.i.t.h

文:田島諒
写真:鈴木公平/半田安政