「死ぬ直前まで行くぞ!」10-FEETは熱狂を作り出しながら新境地もアピールした

  • 2023年6月25日
  • 0625

お~、地面が揺れる。マジかっ!? ここはホールの2階席じゃないぞ。埋め立て地とは言え、一応、大地だ。足元をゆさゆさと揺さぶられながら、ぐるぐると回る観客の姿を見ていたら、なんて柔なんだと思われそうだが、ちょっと酔ってしまった。

「ぶっとばすぞ! どっちが激しいか勝負な。よっしゃ、行くぞ。DEAD POP。どっちがかっこいいか勝負な。死ぬ直前まで行くぞ!」
昨年にひきつづき、今年もDEAD POP FESTiVALのステージに立った10-FEETがTAKUMA(Vo, Gt)の、そんな雄叫びから1曲目に投下したのは、長年、ライブで演奏しつづけているメロディック・パンク調の「VIBES BY VIBES」。早速、観客がダイブとモッシュ・サークルで応え、冒頭に書いたとおり地面を揺らしたのだが、もちろん10-FEETの3人がそれで満足するわけがなく、「まだ生きてるやん(笑)」とTAKUMAが観客に発破をかけながら繋げたのがこれまた10-FEETを代表するライブ・アンセムの「RIVER」。多摩川と鶴見川というDEAD POP FESTiVALの会場である川崎を流れている川の名前を歌詞に入れ込みながら、メロディック・パンク・サウンドに乗せたせつないメロディが観客の気持ちを鷲掴みにする。

途中、コール&レスポンスを交え、観客に声を上げさせながら、この日、10-FEETの3人が演奏したのは、現在、バンドが邁進中のツアーのセトリから、ぎゅっと代表曲を凝縮するように選んだ新旧の全7曲。NAOKI(Ba, Vo)がTAKUMAの歌の裏で奏でるカウンター・メロディも聴きどころだった「風」のような聴かせる曲も交えながら、前述した2曲や後述する「CHERRY BLOSSOM」といったライブ・アンセムが熱狂を作り出す一方で、「ハローフィクサー」「第ゼロ感」といった曲は、バンドの新境地もアピールする。
ジャズっぽいイントロがKOUICHI(Dr, Cho)によるスネアの連打からテンポアップする前者は、TAKUMAがガガガと鳴らすメタリックなギターや、NAOKIが加えるシャウトがラウド・ロックのセオリーを思わせる一方で、サビのメランコリックな展開、音色を揺らしたギター・ソロ、巧みな転調がバンドの円熟を連想させ、打ち込みも使った後者はダンサブルなサウンドで観客をダイブさせるという新たなアンセムの在り方も示していたように思う。

そして――。
「おまえらなんかに絶対負けへん。起きたか? そんなんでSiMに繋げられんのか!?」
今一度、TAKUMAが観客に発破をかけながら披露した「ヒトリセカイ」ではTAKUMAが精一杯の歌唱を披露して、ガッツを見せる。そして、そんなTAKUMAを観客がTAKUMAの歌と掛け合うようなシンガロングと手拍子でバックアップする。

「ありがとう!」(TAKUMA)
残り4分。バンドがラストナンバーに選んだのは、「CHERRY BLOSSOM」。演奏する前にTAKUMAが言った「最後にサビで思いっきりタオルを投げられる曲やります!」という言葉どおり観客全員がタオルを頭の上に投げ、バンドとともにライブのクライマックスにふさわしい光景を作り出す。そして、その「CHERRY BLOSSOM」を演奏しおえたとき、まだ45秒残っていることに気づいたTAKUMAの合図で「RIVER」のサビを一瞬だけ演奏した3人に観客は大きな拍手を送ったのだった。

<セットリスト>
01.VIBES BY VIBES
02.RIVER
03.ハローフィクサー
04.風
05.第ゼロ感
06.ヒトリセカイ
07.CHERRY BLOSSOM

文:山口智男
写真:かわどう