時代は変わろうとも、名曲は世代を超えると証明したミクスチャーバンドの雄、山嵐

  • 2023年6月24日
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音楽シーンがどんなに変化しようとも、そしてバンドを取り巻く世界がどんなに変化していこうとも、バンドカルチャーというアイデンティティを見失うことなく、大切にしているバンドがいる。そもそも、これだけテクノロジーは進化しても、さらにコロナという分断が起きても、メンバーは集まって音を鳴らし続けることに惹かれているわけだから、きっとバンドカルチャーはなくなることはないのだろう。そして、どんなにリスナーやファンが増えようとも、ライブをする会場の規模が大きくなろうとも、自分たちがなぜバンドを始めたのかという初期衝動を決して忘れないのだろう。バンドカルチャーが今なお多くのキッズを惹きつけているのはなぜか。そのひとつの答えを、CHAOS STAGEに現れた山嵐のライブで見つけることができた気がする。

山嵐は、1996年に結成された今回の「DEAD POP FESTiVAL」ではベテランのミクスチャーバンドだ。メンバーは、7人の大所帯編成(今回は、ギターのKAZIが体調不良で欠席のため6名)。彼らが「DEAD POP FESTiVAL」のステージに立つのは、今日で2回目。そう、2017年に続くステージとなる。会場は、うだるような暑さが和らいで風が心地よくなってきた。

SEが流れる中クラップハンズで出迎えられた6人。しばしの静寂を挟み、武史(Ba)のうねるベースラインで始まったのは、山嵐の名クラシック1stアルバム『山嵐』から「山嵐」。オーディエンスの熱量も最初から沸点に近い。というよりすでに爆発している。やはり名曲は世代を超える。子どもから10代、20代、30代に40代、さまざまな世代がジャンプしながらこの曲を楽しんでいる。続くは、2ndアルバムからの人気曲「未体験ゾーン」。出だしからグッとくる。曲間でSATOSHIVo)が「ようこそ、未体験ゾーン」と話す中、ステージ袖を見てみれば、後輩バンドたちの楽しんでいる姿が。こうしてバンドカルチャーはつながっているんだなとも感じた瞬間だ。3曲目の「PAIN KILLER」では、さらにヘビーなサウンドがヒートアップした。そう、「今この瞬間を逃したらダメだ」というバンドマンならではの本能が働いたかように。それからMCSATOSHIが「DEAD POP FESTiVAL」に参加できた喜びとSiMへの謝辞を伝えて、「80」に突入。「一緒に飛ぼうぜ」の煽りにオーディエンスが飛び跳ねていく。ブラックのファッションに身を包んだ6人が生み出すグルーブに引き込まれる。ここから「涅槃」「Rock’n’ Roll Monster」といった、スローな曲調ながらもヘビーな音と高速のラップが魅力なナンバーでオーディエンスをより深いところへ引きずり込んでいく。

「山嵐の名前を見つけたら遊んでください。SiM、呼んでくれてありがとう!」とSATOSHIが語り、ラストに選んだのは、これまた1stアルバムからの名曲「Boxer’s Road」! 出だしからオーディエンスたちはジャンプしまくりだ。まるで武史とYUYA OGAWAGt)が鳴らす音は粒子となり、波風のように会場をさらっていくようだ。そしてオーディエンスは山嵐が鳴らす爆音に身を委ねながら、ともに波風の一部になっていく。脳の、網膜の裏側まで焼き付けられた強烈なライブだ。

この山嵐のライブを観た人は、今日という日を忘れないだろう。そして今では過去となったこのライブの熱は、このままそれぞれの胸に消えずに残る。そう、ここからオーディエンスと山嵐の間に新たな物語が生まれ、未来を歩んでいくのだ。また山嵐の名前をライブハウスで見つけたい。やっぱりバンドって最高だ。

<セットリスト>

01.山嵐
02.未体験ゾーン
03.PAIN KILLER
04.80
05.涅槃
06. Rock’n’ Roll Monster
07.Boxer’s Road

文:相沢修一
写真:半田安政