無駄な時間は残さない、10-FEETの心意気

  • 2022年6月25日
  • 0625

少しばかり陽が陰り、いくばくか過ごしやすくなった夕刻のCAVE STAGE。温かい風で包み込んでくれたのが10-FEETだった。SEが鳴り響き、客席で掲げられるタオル。いつ観てもアガる光景の中、ゆったりとした足取りでKOUICHI(Dr/Cho)、NAOKI(Ba/Vo)、TAKUMA(Vo/G)の3人が登場し、ステージ中央で拳を合わせてライヴは「ヒトリセカイ」からスタート。真摯に目一杯の気持ちで歌い上げるTAKUMA、オーディエンスから発せられる想いを受け止めるよう、ステージ前方まで身を乗り出すNAOKI、しっかりとサウンドを支えるプレイを崩さないKOUICHI。三位一体、長年培ってきたバランス感が秀逸だ。

続けて、ゆったりとした入りから覚醒を呼び起こす「ハローフィクサー」へ。いつも以上にしゃがれたTAKUMAの歌声。決して本調子ではないのかもしれない。だが、だからと言って魅力が損なわれることはなく、そのさらけ出された心が伝わり、こちらも身を委ねたくなるのだ。

ここから皆々がそれぞれの心の中で大合唱したに違いない「RIVER」を披露したのだが、ここで嬉しい仕掛けをするのも10-FEETらしかった。TAKUMAが「みんな、スマホあるー?」と呼びかけ、「PayPayを起動してKOUICHIに課金してくれ!」という小ネタを挟みつつ(笑)、スマホのライトでステージ最前から遥か後ろの飲食ブースまでつながるウェーブを巻き起こす。ひと足早い天の川のような輝き。毎回、忘れられない思い出を作ってくれるバンドなのだ。

そして、「ネットの誹謗中傷は嫌い! みんな、仲良うせー!」とTAKUMAが叫び、タイトルコールからドロップしたのが「シエラのように」。優しく願いを紡ぎ、強いリズムも相まって、ひとつひとつの音と言葉が沁み渡っていく。オーディエンスも大きなハンズクラップで後押しをし、一緒にライヴを作っていく様もグッとくるポイントだった。
また、那須川天心選手と武尊選手との戦いがメインとなった『THE MATCH 2022』へ書き下ろした「aRIVAL」を披露してくれたのも嬉しいサプライズ。ヘヴィにエグりつつ、開けたメロディーを鳴り響かせた後、ギアを入れ替えて軽快でキャッチーな「SHOES」へとなだれ込む。このあたりの上手さも流石だ。

終盤に差し掛かり、SiMへの愛情を3人が口にしてから「VIBES BY VIBES」で駆け抜けて締めくく……らないのが10-FEET。「あと2分あるねん! めっちゃ古い曲をやります!」と「DO YOU LIKE…?」をプレイし、いや、まだもうちょっとあると「RIVER」をひと節だけ歌い上げる。無駄な時間は残さない、その心意気も最高だった。

 

1.ヒトリセカイ
2.ハローフィクサー
3.RIVER
4.シエラのように
5.aRIVAL
6.SHOES
7.VIBES BY VIBES
8.DO YOU LIKE…?

 

文:ヤコウリュウジ
写真:鈴木公平