DEAD POP FESiIVAL 2022、CHAOS STAGEもトリの時間を迎えた。ステージに登場したのは横浜B.B.streetを根城にするミクスチャーバンド、IRIE BOYSだ。予定されていたtricotは開催2日前にコロナ関連の止むを得ない事情で急遽出演できなくなり、そのピンチヒッターとして呼ばれた形だ。IRIE BOYSを知らない人のために、ざっくりバンドのことを説明しておくと、彼らは次世代を担う横浜発ハードコアパンクシーンの雄。レゲエや民族的なサウンドを取り入れたミクスチャーバンドだ。初DEAD POP FESTiVALにして、いきなりのCHAOS STAGEトリという超大舞台。かますしかないだろ、IRIE BOYS! という周囲の期待に見事応えたステージの模様を記しておきたい。
ステージから少し視線を左に向けると、海に沈んでいこうとする夕陽がオレンジ色に輝いているのが見える。SEが鳴り、紫の照明に照らされたステージにメンバーが続々と登場。最後にAlan(Vo/Djembe)が飛び込んでくると、フロアからは一斉に手が上がった。正直、DPのオーディエンスがちゃんと集まるのだろうか? という危惧はあったのだが、完全に杞憂だったようで、前方フロアはみなAlanの煽りに合わせて手を上げていた。開口一番「DEAD POP FESTiVAL 2022! tricotに代わって、オレたちが全員の心を躍らせに来たぞ! 横浜代表、IRIE BOYS始めるぞ!」と気合を吐き出し「Master of Life」に。続く「Stir it up」ではAlanがイントロでジャンベを叩き、沸々としたフロアをどんどん上げていく。
「BANANA」は彼らが初期から大切にしている楽曲なのだが、シンガロングしたくなるリリックが特徴的。初見でも絶対にノってしまうリズムとメロディで、気がつけば、ライブスタート時よりも多くのオーディエンスが引き寄せられるように集まっていた。さながら70?80年代のレゲエミュージシャン然としたファッションのShinhong park(G)が「5年前につかめなかったものを今日つかみにきました」と宣言して「A.I.W」に。実はIRIE BOYSは2017年にCHAOS STAGEのライブ審査オーディションに参加し最終選考まで残ったが、結果的にDPFへ出演できなかった経緯がある。それが5年の歳月を経て、こうしてCHAOS STAGEのトリとしてステージに立っているわけだ。彼らの気迫がハンパじゃないことは言うまでもないことだったのだろう。
「(DPF出演について)みんなビックリしたでしょうけど、オレが1番ビックリしてるから(笑)。2日前にMAHさんから電話をもらったんだよ。tricotの代わりにIRIE BOYS出てくれないかって。なんでオレたちなのかを聞いたら『オレの地元のヤツらに任せたい』って言ってくれて。ってことはSiMの後輩ってことですか? やったぜ! 先輩のピンチをチャンスに変えにきました!」とAlan。SiMとDPFへの感謝、リスペクトを感じさせるエピソードを話し、フロアもより一層ウェルカムムードだ。「夕陽に合う曲を」と紹介されたのは2019年リリースの『I』に収録されている「Hold On」、これがまた見事なレゲエパンクチューンで、合間にボブ・マーリー(またはザ・ウェイラーズ)の楽曲「Get Up, Stand Up」や「Everything’s Gonna Be Alright」の一節を差し込みながら、この音楽シーンに対するIRIE BOYSならではの愛を表現した。Riku(Ba)とShinyong.P2(Dr)が描くグルーヴも見事なもので、うっかり身体を揺らして踊っていた人も多いのではないだろうか。曲中、昨日の10-FEETさながらにスマホのライトをバックに照らさせるなど、初フェス出場とは思えないほど野外フェスのステージを自分たちのものとして表現していた。ラストは「He’s」で、力強い咆哮を東扇島へ轟かせライヴは終了。
ピンチヒッターという役回りでの出演ではあったが、確実にフロアを沸かせ大いに爪痕を残したIRIE BOYS。このめっちゃ踊れるパンクを知らない人は、この機会に是非チェックしていただきたい。今日、演奏された楽曲は彼らが昨年リリースしたアルバム『Buddys FM 045』に大体収録されているので、それから聴け。
<セットリスト>
1.Session
2.Master of Life
3.Stir it up
4.BANANA
5.A.I.W
6.Hold On
7.He’s
文:田島諒
写真:半田安政