「ロックとは違う出どころからやってきた矜持を置いていきたい」

  • 2021年6月27日
  • 0627

CHAOS STAGEのトリ。そして、大トリのSiMの直前という意味、大舞台に立つ興奮を隠さずに臨んだ今回のDEAD POPは昨年出演が決まっていながら、ステージに立てなかったリベンジという意味合いもあったようだ。

ソーシャルディスタンスを保つため、入場数を制限していることに気づかず、柵の中(ステージ前方エリア)の観客が少ないことを、R-指定が若干残念がっていたこともそうだが、1曲目の「合法的トビ方ノススメ」が終わったところで、「カッパを着ながら雨に打たれて、やっとフェスっぽくなってきたんちゃうの? でも、お客さんだけ濡れてるのはフェアじゃないから俺もびちゃびちゃになって楽しんでいきたいと思います!」とR-指定がDJ松永が止める間もなくペットボトルの水を頭からかぶったところもからもいろいろな意味が重なったDEAD POPに挑む気合が十二分に感じられた。

「声出しはダメですが、手を挙げたり、手を叩いたり、飛び跳ねたりはすべて合法的になってますから」(R-指定)と「合法的トビ方ノススメ」で観客を飛び跳ねさせると、「ヒップホップの聖地・川崎、そしてDEAD POPにマイクとターンテーブルの少数精鋭スタイルで乗り込んできました。日本語ラップの顔役です」(R-指定)と「顔役」、そして「Bad Orangez」と曲を繋げていく。エモーショナルかつアンセミックな後者は言うまでもなく、松永が繰り出すビートもR-指定が言葉をたたみかけるラップもともに性急な前者もいわゆるヒップホップのラップとは違うユニークさがある。

そして、「可能性が無限だった生れた頃を思い出して、いい意味で肩で風を切って生きていきたい。次に会う時まで、いい意味で勘違いして、胸を張って生きてください。逃げ道を作って追い詰めすぎずに生きて、また会いましょう。俺たちなりの決意と言うか、逃げ道の提案です」とR-指定がコロナ禍の中で見出したという答えを語ってから披露した「かつて天才だった俺たちへ」。

ジャズ調のトラックと、ほとんど歌に近いR-指定のラップという組み合わせがCreepy Nutsのユニークさを際立たせるこの曲で、彼らは会場の隅から隅まで手を振らせ(サビではワイパーも!)、ロック・フェスでも十二分に戦えるポテンシャルを見せつけたのだった。

「また笑って会えるぐらい、みなさん元気になれましたか?」

R-指定がそんなふうに観客に語りかけたのは、彼らを元気にできたという確信があるからだ。R-指定も満足そうだ。しかし、そこからがCreepy Nutsの真骨頂。ここでもう1曲、観客を踊らせ、大いに盛り上げてからエンディングを迎えることもできただろう。

しかし、彼らが選んだラスト・ナンバーは「生業」。

「クライマックス(大トリのSiM)の前に、ロックとは違う出どころからやってきたアーティストとして矜持を置いていきたいと思います。淡々と言葉で刺していきます。生き様を置いてかせてください」

陰鬱なギター・リフに乗せ、自らの信条、そして身上をまるで呪いを込めるように語るR-指定の声がやがて絶叫に変わる。

R-指定とDJ松永。マイクとターンテーブルだけでロック・フェスに乗り込み、決しておもねることなく自分たちのスタイルを貫きながら見事、戦いきった。まさに冒頭に書いた大舞台にふさわしい熱演だった。

 

<セットリスト>
1.合法的トビ方ノススメ
2.顔役
3.Bad Orangez
4.かつて天才だった俺たちへ
5.生業

文:山口智男
写真:半田安政