「2日間で20組のアーティストがとんでもないライブと想いのこもった言葉でバトンをつないでくれました。しかもそのバトンは雪だるま式に太く重たくなっていくんだ……ってそんなの要らない! そんな重たいバトンを持ってステージに立つ俺らの気持ちになってほしいわけですよ! 我々は軽やかな気持ちで最後のステージを遊んでいきたい」とMAH(Vo)は冗談交じりに言っていたが、言わずもがな重たいバトンを受け取っているのは間違いなく、ただ、彼らはそんなバトンを手にしながらも、軽やかに、2日間を締めくくるステージを、めいっぱい楽しんでいた。
いっとき会場を濡らした雨も気がつけば止み、空には夕焼けが広がる。そんなドラマチックな時間にいよいよ、SiMが降臨。バンドは「DiAMOND」でその幕をダイナミックに開けると、SIN(B)が激しくスラップを聞かせる「CAPTAiN HOOK」へとつなぎ、バンドの最新モードを見せつけていく。「本当はみんなと歌いたかったけどしょうがねえ」と言っていたMAHが、まるで歌声を聴くかのように耳に手を当てる、その顔が寂しそうでもあり、どこか満足げでもあった理由は、次曲「Blah Blah Blah」前のMCで語っていたことと同じ。「『Blah Blah Blah』をやられてもちゃんと歌わずに我慢できるロックファンはそれだけロックフェスを守ることに必死なんだ、本気なんだってところを見せてやろうぜ」。実際「CAPTAiN HOOK」でも「Blah Blah Blah」でも、誰も歌わなかった。ここでMAHの言葉を借りてしまうけれど、「これがロックのやり方」だ。
ただし。歌えない、暴れられないからといって物足りない? そんなことは一切なく。GODRi(Dr)がアフリカンなリズムを繰り出すと、前回2019年の「DEAD POP FESTiVAL」では仮タイトル「ドンキーコング」として披露した「SAND CASTLE」を、今回もあっこゴリラと共にパフォーマンス。
続く「Devil in Your Heart」ではまるで呪文のような歌詞と高速リズムで踊らせるなど、4人は自ら“神盤”と掲げた最新アルバム「THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES」収録曲で、軽やかに(手にはしっかり太くて重たいバトンを持っているけれど。)遊ぶ、遊ぶ。
たっぷり遊んだあと、MAHは改めて現状に言及。コロナ禍での「DEAD POP FESTiVAL」開催までの苦悩や、世の中のムードに悔しさを滲ませるも「どうせだったら上の人のルールに乗っかって、正々堂々と生き抜いてやろうと思いました」と自らのアティチュードを示す。その上で、賛同してくれた出演者および来場者を、「みんながモヤモヤを抱えて2日間やってくれたことは絶対に未来のロックシーンにつながるので、どうか誇りを持って帰ってください。ただフェスに来た人じゃない。日本のロックシーンの礎になった人たちだと思います」と讃える。そして「日本の未来、ロックシーンの未来を、目に見えないウイルスなんかに殺されてたまるかー!」とバットを振り回して「BASEBALL BAT」でSiMらしく対抗した。
「死ねー!」と潔く始まった「KiLLiNG ME」では、MAHが「ギター弾ける人?」とフロアに尋ね、袖にいた猪狩秀平(HEY-SMITH)が挙手しながらステージへ。SHOW-HATE(G)が猪狩にギターを託して、前回のリベンジを果たす(前回は猪狩を呼び込むもそのままダイブさせたが、今回はちゃんと弾いた!)。さらにMAHとSHOW-HATEが「もう終わりでいい?」と終わりのムードを漂わせると、お次はステージ袖からKenta Koie(Crossfaith)が登場。koieとMAHのヘヴィなシャウトを合図に、ウォール・オブ・デスならぬ“ウォール・オブ・ヘア”が発生するという、盛り上がりつつも、妙にアットホームなエンディングで、「DEAD POP FESTiVAL 2021」の幕は降ろされた。
最後、観客からアンコールを求めるクラップが上がるとMAHは「来年もやるし」と一言。サラッと言っていたけれど、彼はこの日「お前らのここは、俺らが絶対守ってやるからな」ときっちり話していたし、イベントのオフィシャルTシャツにも「NEVER DIE」をくっきりとプリントされている。「DEAD POP FESTiVAL」、また来年。私も来年また、レポートしに帰ってきます。
<セットリスト>
1. DiAMOND
2. CAPTAiN HOOK
3. Blah Blah Blah
4. Set me free
5. SAND CASTLE feat. あっこゴリラ
6. Devil in Your Heart
7. BASEBALL BAT
8. KiLLiNG ME(feat. 猪狩秀平)
9. f.a.i.t.h(feat. Kenta Koie)
文:小林千絵
写真:鈴木公平