「マジな話、次いつライブができるのかわかりません。俺は今日が最後のライブのつもりで、その気合いで行くからな」。これは猪狩秀平（G, Vo）の言葉。もしかしたら「そのMC、ほかのライブでも聞いたよ」と思う人もいるかもしれない。私もそう。だけど今日のレポートにも書かずにいられないほどに、今日のライブにも本気で「今日が最後のライブかもしれない」という彼らの気概が表れていた。
「おはよー！」と威勢よくステージに入ってきた猪狩、YUJI（B, Vo）、満（Sax）、Task-n（Dr）、かなす（Tb）、イイカワケン（Tp）の6人は、目覚ましがわりに、軽快な「Living In My Skin」をお見舞い。続いて「2nd Youth」「Drug Free Japan」「Endless Sorrow」と、次々にストロングなナンバーを畳み掛けていく。
踊らせたり、“心の声”で叫ばせたりするだけでなく、ホーンのロングトーンが高揚感を煽る「Dandadan」、艶やかさすら感じさせるベースラインが心地よい「Fog And Clouds」と、音楽に体を委ねる快感も教えてくれるHEY-SMITH。かと思えば、SiMと出会った頃の曲として「I’m In Dream」「We Are…」をプレイして、バンドの関係の深さも伝える。
一体感の生まれる会場を見渡して、「声は聞こえないけど、感じるものがあるわ。これが音楽か」と猪狩は改めて、驚く。「来年まで忘れないように音楽響かせてくれ」との言葉から「Summer Breeze」へ繋ぐと、懐かしい曲を終えて感傷的な気分になっていることもあってか、冒頭、YUJIの伸びやかなボーカルを牽引するギターを猪狩が思わず失敗。珍しいなと思いながらも、YUJIの「めっちゃ気持ちよく歌ってたのに！（笑）」と、猪狩の「来年まで忘れへんやんな？」という和やかなやりとりを見る。そしてバンドは気を取り直して、さわやかに同曲を届けた。すると歌い終えたYUJIと猪狩が同時に「ありがとうー！」と感謝を告げる。猪狩が「ハモったな。初めて気、合ったんちゃう？ すごいわ、DEAD POP」と言うと、YUJIも「照れちゃった」とはにかむ。そんなレアな一面が見られたのも、きっと気心知れたSiM主催のイベントだからこそ。それから、きっと彼らが「今日が最後かもしれない」、そう思って本気でライブをしているからこそ。
その後、「正直言って、今、人生で一番つらいときかもしれへん」と猪狩。「でも振り返ると、そういうときそのあとにはすごくいいことがあった」と続ける。「2番目（につらかった時期）はメンバーが脱退した時。でもメンバーが加入したらうれしかった。今、ハモれたらもっとうれしかったわ。だからこのあとにももっといいことがある」とYUJIに目をやり、どこか恥ずかしそうにしながらも6人は笑顔に。そんな和やかなバンドの雰囲気につられるように、観客も目を細めていた。
そして最後にバンドは「Don’t Worry My Friend」を高らかに届ける。主催者である盟友・SiMや、ひさしぶりに会えたファンに向けた選曲だろうが、バンドメンバーへの思いも込められているのではないかと、今日はそんなことを思ってしまった。すごいわ、DEAD POP。
＜セットリスト＞
01. Living In My Skin
02. 2nd Youth
03. Drug Free Japan
04. Endless Sorrow
05. Dandadan
06. Fog And Clouds
07. Over
08. I’m In Dream
09. We Are…
10. Summer Breeze
11. Don’t Worry My Friend
文：小林千絵
写真：鈴木公平