コロナ禍のライブに慣れるな! MAHの意志つなぐDragon Ashのステージ

  • 2021年6月26日
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Dragon Ashは、コロナ禍に制作された新曲「New Era」でライブを幕開け。サポートベーシストにT$UYO$HI (The BONEZ / Pay money To my Pain)を迎え新体制となったDragon Ashの決意、そしてコロナ禍で“新しい生活様式”が必要になってしまった今の世界について歌ったこの曲を、櫻井誠(Dr)とT$UYO$HIの生み出す躍動感あふれるビートに乗せ、歌詞の通り高らかに鳴らしていく。じっくりとバンドの最新モードを見せつけたあとは、メンバー同士が顔を見合わせタイトな演奏を聴かせた「Mix it Up」、“喜びの歌”「Ode to Joy」でテンションを引き上げていった。

3曲を終えると、Kjが最初に「ごめんね」と一言。その意図は、ライブハウスやフェス会場で、アーティストはマスクもアクリル板もないステージ上で声を出せるが、来場者はマスクやソーシャルディスタンスの確保などの規制が敷かれており、窮屈な思いをしているのは来場者だからだという。しかし彼は「でも何もないより、ロックが鳴り止むよりはいいよな。どうか音楽を好きな人からライブを取らないでください」と切実な思いを続け、観客からは賛同を表す温かな拍手が贈られた。

ミディアムチューン「ダイアログ」で柔らかな空気に包むと、続く「百合の咲く場所で」では拳で応える観客をKjが拍手で讃える。Kjが「タオル振り回すのは構わないって!」と煽った「Jump」では、彼の目論見通り色とりどりのタオルが会場を舞う。その景色に目を細めるKjはフロアに向かって「DEAD POP楽しいですか?」と尋ねていたが、それを聞くKjの声が、誰よりも楽しんでいることを物語っていた。しかも楽しんでいたのはKjだけでなく、その証拠に、曲が終わるとステージからメンバー同士の和やかな笑い声が聞こえてきた。

Kjは「先日SiMと対バンしたときにMAHが言っていた」と前置きして、「いろんなバンドがいろんな戦い方をしてるけど、MAHはみんなが(コロナ禍中でのライブに)慣れちゃうのが怖いんだって。だから(コロナ禍でも)バチバチにやって、ゆくゆくはモッシュピットで大爆発させたいんだって」とMAHの言葉を届ける。ステージ袖でライブを見守るMAHも思わず頷く。ここでそのMCをするということは、おそらく同じことを思っているだろうDragon Ashは、最後に<有り余す程の 鳴り止まぬ音の/直中に立って 生まれた物を/100の感情を 殺せないよ>とまるでコロナ禍の今を表したかのような歌詞から始まる「A Hundred Emotions」をプレイ。ステージ上では、思う存分暴れられない、思う存分歌うことのできないオーディエンスがうらやましくなるくらい、メンバーが激しく動き回り、分厚いコーラスを響かせてライブを締めくくった。

彼らはこの日、暴れ回ることのできないフロアを寂しそうに見つめながらも、終始「何もしないよりは、音楽が鳴り止むよりは」と口にしていた。最新曲「New Era」では<今日だって僕達は生まれ変われるよ/そう願って僕達は歌い奏でるよ>と歌う。コロナ禍という新しい世界で、きっと彼らはこれからも歌い奏で続ける。その決意のステージだったように思う。

<セットリスト>

1. New Era
2. Mix it Up
3. Ode to Joy
4. ダイアログ
5. 百合の咲く場所で
6. Jump
7. A Hundred Emotions

文:小林千絵
写真:鈴木公平