DEAD POP版ベスト・ヒット選曲で作り上げたピースフルな一体感

  • 2021年6月26日
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岡崎体育、Age Factory、THE ORAL CIGARETTESによる熱演が続いた後だ。しかも、太陽こそ出ていないものの、会場はなかなかの蒸し暑さ。昼食も含め、そろそろ一休みしようと考えていた観客も少なくなかったんじゃないか。実際、「これから学校では教えないことをMighty Crownが伝えていく」とライブのスタートを告げる「先制宣誓」が流れた時には、まだステージ前方エリアは観客もまばらだった。

しかし、そこは30年のキャリアを持つ日本が世界に誇るNo.1レゲエサウンドだ。一息なんてつかせてたまるか。

「ロック・フェスの俺らのスタートのアウェイ感。ずっと味わってきた」と言いながら、不敵な笑みを浮かべたMasta Simon(MC)にはすでに勝算があったに違いない。

「後ろで観ている奴ら!(ステージの前に)スペースあるから入ってきてください!」とそのMasta Simonが観客に呼びかけると、続けてSami-T(Selector / MC)が「DEAD POP FESTiVALが開催されたことに感謝している奴らは両手を挙げろ!」と声を上げる。

続けてDEAD POP FESTiVALの開催を祝福した彼らは「野外フェスにレゲエが似合わないわけがない」とボブ・マーリーの「Iron Lion Zion」をはじめ、レゲエ・ナンバーの数々をプレイ。Masta Simonの呼びかけに応えるように集まってきた観客の体を揺らしていった。

そして、「ロック・フェスでMighty Crownを観た人いますか? Mighty Crownにはロック・セットってあるんだよね」(Masta Simon)と山嵐の「山嵐」、RIZEの「神」、MAN WITH A MISSIONの「Get Off My Way」など、DEAD POP FESTiVALの観客にはお馴染みのロック・ナンバーのダブをたたみかけるように繋げたんだから堪らない。すでに体がすっかり温まっていた観客のテンションは一気に上昇。「踊れ! 自分のスペースを守って!」とMasta Simonに応えるように観客たちが大きく揺れた。

そこから「アイドルはめったにかけないけど、このアイドルはクソヤバイ。SiMもびっくりしてます」とBiSHの「NON TiE-UP」、「めちゃくちゃレアです」とイギリスのレゲエ・ロック・バンド、Skindredの「Warning」、「レゲエ・パンクと言ったらこれしかないんじゃないでしょうか」とSiMの「Blah Blah Blah」に繋げた時には最後列の観客も踊り出している。そこでMasta Simonは「モッシュがダメでも、ダイブがダメでも楽しみ方はあるぜ!」と堂々と勝利宣言。

HEY-SMITHの「Endless Sorrow」、MAN WITH A MISSIONの「FLY AGAIN」、Hi-STANDARSの「STAY GOLD」、FIRE BALLの「BRING IT ON」とノンストップで繋げた終盤はDEAD POP FESTiVALデッドポップ版のベスト・ヒットなんて印象も。

そして、全出演バンドの名前を挙げ、リスペクトの気持ちを謳い上げた彼らはもちろん観客に対する感謝の気持ちを伝えることも忘れなかった。

「こんな状況でも来てくれたおまえらをほんとにリスペクトする」(Masta Simon)

最後は、「人の幸せは自分の幸せ。自分の幸せは仲間の幸せ。One love. Peace」(Masta Simon)というメッセージを込め、Chozen Leeのアコースティック・バラード「Songs Of Love」をプレイ。それまでの熱狂から一転、ピースフルな空気が会場全体を包み込む。そして、そこにいる全員がゆっくりと手を横に振りながら大きな一体感を作りあげたのだった。

 

文:山口智男
写真:半田安政