Age Factory 「空まで届くように手を挙げて」開かれた空間で共有した音楽の楽しさ

  • 2021年6月26日
  • 0626

SEから青く照明が照らされ、メンバーがするりとステージに登場。拳を固く合わせた会釈。「Age Factoryです。よろしく」とシンプルな清水英介(Vo,Gt)の挨拶からぱっと1曲め「Dance all night my friends」に。2ndアルバム『EVERYNIGHT』に収録されている最初の楽曲であり人気曲。オーディエンスも静かに身体を揺らせながら音に乗り始めた。1度めのサビで、そのメロディを聴いていると、すーっと、この空や横に広がる海の光景が視界に入ってきて、ああ、外で音楽に包まれているんだなぁという心地よい気分になる。部屋で聴くのとはまた異なる、自然に溶け込むように馴染む清水英介と歌と西口直人(Ba, Cho)のコーラス。この爽やかな気分は野外でしか味わえない。

「空までいこう、遠くへいこう」という紹介から2曲め「HIGH WAY BEACH」、「風を感じて君を思い出す。悲しくなんかないぜ、一緒にいる」という清水英介の言葉から3曲め「Everynight」へ繋いだ。終曲後、「聞こえてるか、みんな。どこまでもいこう。空の上まで」と「1994」に。ステージを見つめるオーディエンスは過度にアクションを起こすわけではなく、サビに合わせて手を振ったり、握りしめた拳を空に掲げたり。そんな風に思い思いに楽しんでいた。もちろん今はコロナ時代であるから、モッシュ・ダイブ・シンガロングは禁止されているわけだが、だから、というわけではなく、ごく自然な楽しみ方として身体をユラユラ揺らすというリアクション。Age Factoryの音楽でリラックスした状態で遊んでいるような感じだ。

MCタイムでは「奈良県から来ましたAge Factoryです。初めて出れて嬉しいです」とDEAD POP FESTiVAL初登場への喜びとSiMへの感謝を述べ、次のように清水英介は続けた。「(コロナ禍で)踊れないけど空の下で同じ曲を聴いている。この時間を大切にしたい。オレたちはそういうバンドだから、自由に」。そこから演奏された「Merry go round」。まさしくMCにあった通り、各々が自由に、楽曲に合わせて踊れる範囲で身体を動かす。サビだからこうしなくてはならない、周りと同じように動かなくてはいけない、そんな制約がまったくない純粋な音楽の時間だ。ソーシャルディスタンスが保たれた会場では、こういう音楽が、こういう楽しみ方ができるAge Factoryのロックが沁みる。

「こっから3曲やって帰るから。空まで届くように手を挙げてよ。オレたちといこう。何かが見える気がするんだよ」と話しながらなだれ込んだ「GOLD」。イントロから一気に変わる会場の空気感がヤバい。さっきから『オーディエンスは自由に音楽を楽しんでいて』と書いてきたが、こと「GOLD」 に関しては、サビのシンガロングパートでの拳の上がり方は格別だった。そして、きっと初見だったであろう観客も、この頃にはすっかりAge Factoryの世界観に呑み込んでしまっていた。ラスト2曲は「GOLD」と同じく1stアルバム『GOLD』から「TONBO」と「See you in my dream」。「また会おう」と再会を誓う清水英介の言葉でパッと演奏が止まりライブは終了。一瞬の間を置いて、長い拍手がオーディエンスからAge Factoryに届けられた。

初登場ということもあって、今日が初Age Factoryだったという人も多かっただろう。どんなライブをするんだろう? という期待を込めた視線を送っているオーディエンスも多く見受けられたように感じる。そんな空気の中で、曲を追うごとにどんどんオーディエンスを乗せていき、身体を動かせていったのは、Age Factoryが持つ強さの証。気づけばコップの注がれた水が表面張力でギリギリの均衡を保っているような緊張感と心のうちにある静かな高揚感が場内に充満していて、それらの光景をみて感動させられた。ここではないどこかへ連れていってくれたAge Factoryのライブに感謝。

<セットリスト>

1.Dance all night my friends
2.HIGH WAY BEACH
3.Everynight
4.1994
5.Merry go round
6.GOLD
7.TONBO
8.See you in my dream

文:田島諒
写真:半田安政