「今日この場からSiMの新しいフェーズが始まるぞ!」伝説とは大雨の野外フェスで生まれるもの

  • 2026年4月4日
  • 0404
  • SiM

昨年のDEAD POP FESTiVAL2025 2日目の最後に、「日本の夏は、暑すぎる!」と叫んだMAHの言葉に、我々は天啓を受けた。その日、DPFの民は思ったのだ。「マジでそれが一番だ」と。

そんな我々の希望を受けて、SiMはDEAD POP FESTiVALを春フェスへと移行してくれた。これにて、あの灼熱の地獄から解放されることになり、MAHの言葉を借りるのならば「ちょっと肌寒いのかなぁ」くらいの気持ちで東扇島に足を運んだ。ところが、である。まさかの雨日和。しかも、まぁまぁ寒い。
雨は朝から降ったり止んだりを繰り返しながら、その中でバンドからバンドへバトンが紡がれ、いよいよアンカーのSiMへと届いたその瞬間。天からはまごうことなき横殴りの雨が注ぎ込まれる。まさに悪魔的である。この日一番の雨の中で、心臓を捧げたDPFの猛者どもがSiMを待ち受ける。
しかしだ。歴史を見てもわかるように、伝説というのは大雨の野外フェスで生まれるものである。今日のSiMのライブは、まさに一つの伝説として、今後もDPFの民に語り継がれていくことになるだろう。

サイレンが流れ、真っ暗なステージに白いフラッシュと光が蠢く中にメンバーが続々と登場し、「PANDORA」でライブがスタート。歓声と同時にヘッドバンギングで応じるオーディエンス。バックのLEDスクリーンには楽曲のイメージに合ったビジュアルが映し出され、それに合わせてライブが進行していった。
「死ねー!」の言葉と共に始まったのは、早くも「KiLLiNG ME」! 中盤には「みんな、下濡れてるから嫌か? DPFはSiMと一緒に死ぬんだろ!」とフロアを刺激し、その場に全員を座らせて一斉にジャンプ! どんな豪雨の中であっても、SiMのライブである。その場に立ってゆっくりとステージを眺めていることなんぞ、決して許されない。徐々に熱気を帯びてきたCAVE STAGE、お次は伝家の宝刀「T×H×C」だ。この寒さを吹き飛ばすような選曲をガンガンぶつけてくるSiM。その完全な攻めのライブにオーディエンスも鼓舞され、いくつものサークルモッシュが生まれ、ワイプやダンスが巻き起こる。曲間にも怒号のような歓声をステージに投げかけていた。改めて思わざるを得ない。ナヲが言っていたように、DPFのお客さんは頭がおかしいんじゃないか、と思えるほどに体力お化けである。

MCでは「DPFなんだから雨もクソもねぇんだけど! 今日だけはガチでありがとう」と、朝からの雨をモッシュとダイブで乗り越えてきたDPFの民に、労いの言葉をかけるMAH。これに大いに拍手と歓声で歓喜するフロア。次曲「MAKE ME DEAD!」では、バックスクリーンに墓場から這い出すゾンビの映像が流れ、会場をパープルとグリーンの照明が照らし、ゴーストタウンのような演出がなされた。しかし、ステージに向けて無数の手が真っ直ぐに差し伸べられ、それがリズムに乗ってユラユラと揺れ動く様を見ると、この場にいるオーディエンスが、無尽蔵の体力を持つゾンビにすら見える。そんなDPFゾンビーズは、サビでクラウドサーフを繰り出し続け、無限のスタミナを見せつけていた。ステージに雨が降り込んでくるというのに、MAHは上手下手へと縦横無尽に動き回り、びしょ濡れになることを厭わない。凄まじい気迫がSiMからも伝わってきた。

「雨音でみんなの声が聞こえないわ。今日一番の声、出せますか?」に大歓声が上がると「言われる前にやれ!」の言葉と共に「The Rumbling」! 巨人の映像をバックに、あの叙情的なメロディとボーカルラインが青い照明に乗せて届けられる。そこに雨が降り注いでいる様は、実に情緒がある。ブレイクでギターの音が残る中、MAHが心臓に手を当てる敬礼の姿勢を取る光景は、いつも以上に印象的で、まるで戦場を描いた映画のワンシーンを観ているような緊迫感に惹きつけられた。

「『The Rumbling』を出してから、急に世界への切符が手に入りまして。アメリカもヨーロッパも2周くらいして。これからもワールドツアーは続くと思います。多分3年くらいアルバム『PLAYDEAD』モードで駆け抜けてきたんですが、今日、この場で新しいフェーズが始まるぞ!」といったMCから、今日演奏されるのを心待ちにしていた「FiVE TiMES DEAD」へ! この楽曲は、今回のDEAD POP FESTiVALへ向けた曲であることもMVから見て取れる。そんでもって、シンガロングポイントも多数! モッシュにダンスポイントも盛りだくさん! ということで、盛り上がらないわけがないのである。CAVE STAGE前にいた全員がこの曲を待っていたことがわかるほど、シンガロングもモッシュのタイミングもぴったりだ。新たなアンセムの誕生を思わせる瞬間のまま、ラストと宣言された「DO THE DANCE」へ。会場全体がジャンプし、大いに東扇島公園を揺らした。

おそらく、ここで一旦はけてアンコールへ、という流れだったのだろうが、「みんな待たせるの悪いからこのままやろう!」とMAH。「明日もやろうなー!」と「Blah Blah Blah」へ繋げて、いよいよ最終曲へ。

「みんな約束してくれよ! お客さんもスタッフのみんなも、なるべく熱いお風呂に浸かって寝てください! 明日も元気に会いましょう。DEAD POP FESTiVAL 2026 1日目でした!」 とMAH。フロアを真っ二つへ分けるアクトで、最後の曲が「f.a.i.t.h」であることがオーディエンスに伝わる。大雨の中、左右に大きく分かれたDEAD POP FESTiVALの民が、今か今かと曲の開始を待ち受ける。その様子はまさに戦国時代の合戦そのものだ。東西の侍が勢いよくぶつかり合うような激しい光景は、さながらラグナロク。こんな光景、土砂降りでなければ拝むことはできない。ここまで激しい「f.a.i.t.h」になったのも、雨で全員のタガが外れたからだろう。そこに予定調和はなく、リアルな熱量を持ったモッシュピットが存在していた。

雨が照明の光を屈折させて、いつもより叙情的に感じられたDEAD POPのSiM。いつもよりほんの少しだけ優しく響いた悪魔の言葉。いつもよりラグナロクじみていた合戦模様の「f.a.i.t.h」。それらは今日、この場限りでしか体験できないもの。この日の狂気じみた「雨モッシュ」を、私たちはいつまでも忘れないだろう。

<セットリスト>
01. PANDORA
02. KiLLiNG ME
03. T×H×C
04. MAKE ME DEAD!
05. Boring People, Fucking Grays
06. The Rumbling
07. FiVE TiMES DEAD
08. DO THE DANCE
09. Blah Blah Blah
10. f.a.i.t.h

文:田島諒
写真:鈴木公平・半田安政