OZworldは、人が自分らしく生きていくために必要なことをラップで伝えてくれる。それは、他のラッパーもバンドもシンガーソングライターも同じなのかもしれないが、ことOZworldのラップには僕らにとって大切な普遍的な考え方を教えてくれているように感じる。とくに、それがステージでパフォーマンスをするOZworldの姿を見ていると強く感じるんだ。
最後に歌った曲「IROCHIGAI」前のMCがとても印象的だった。
「俺らは悪魔だが、あくまで天使だよ。自分次第だ。自分の好きな自分を生きよう。2年連続で呼んでくれて、HIPHOPの俺をトリにしてくれて。SiMと関わっているスタッフのみなさん、ありがとう。俺はロックというシーンを見ていて、そのロイヤリティの高さに、俺たちHIPHOPはめちゃくちゃ食らっているし、この環境に出会えたことに感謝しています」。
DEAD POP FESTiVALには本来、壁を壊すというコンセプトがある。多々ある音楽シーン内の壁で、特に大きなものはロックとHIPHOPだと思う。その壁が取っ払われればいいという意味では全然ないが、現在のHIPHOPシーン最前線で活躍するOZworldにそう言われたら、DEAD POP FESTiVALを楽しんで生きている我々としては嬉しくならないか? 「IROCHIGAI」はそういう違いを認める歌でもあるので、ぜひリリックをチェックしてほしい。
さて、昨年出演時、OZworldは言葉数少なめにライブを展開していた。今年のステージは少し異なっており、しっかりと自身の考え方を交えながら楽曲を披露してくれた。
夕陽をバックにDJの呼び込みからスタートしたライブ、「宴のその先、人種も何もかも超えたもの。遊んでいこうぜ」と「Peter Son」、「UTAGE3.0」でフロアをジャンプさせ、手を上げさせていた。
「今日という最高にめでたい日のために持ってきました」と、Chico Carlitoを呼び込んでの「弥栄LIT」。沖縄流儀なメロディとリズムに乗ってダンスし、サブのフックはシンガロング。オーディエンスも思い思いにOZwroldのHIPHOPを楽しむ。ちなみに<弥栄>は乾杯を意味する古来からの言葉。そこに沖縄の方言で“めでたい”を意味する<カリー>を足したオリジナルの言葉が「弥栄LIT」だ。今日という音楽フェスにぴったりであろう。
この6月にリリースされたばかりの『369ノ3』収録の「369」では、先ほどCAVE STAGEに登場しフロアを大盛況の渦に叩き込んだHIPHOPクイーン、Awichを呼び込んでのパフォーマンス。「俺たちのマネしてくれる?」と2人で手を合わせ、合掌からの歌い出しとなった。その光景はどこか厳かで雄大。何か儀式めいたものを見ているようで感動してしまった。
いよいよライブも終盤に向かい温まったフロアにOZworldは語りかける。
「1人じゃないぞ、DPF。今日こういう宴では何が起こるか。同じタイミングで同じところを見ているんだよ。音楽が好きな人、手を上げてくれ。ONE」。争いとセットにあるピースではなく、そこから指を1本減らしたサインが好きだ、だから人差し指を空に掲げて「ONE」とひと言。そして、沖縄を舞台にしたリリックを歌う「NINOKUNI」に。こんな風に自身の考え方を語りながら、OZworldの音楽は進行していく。そのラップは民謡的であったり呪術的であったり。どこか日本人のDNAに訴えかけるような力があってノスタルジック。他にないメロディとラップに魅了されてしまう。
そして、冒頭に述べた「IROCHIGAI」へ。曰く「色違いポケモン、最高だぜ」。
終曲後、日没。合掌。
DEAD POP FESTiVAL 2025 CHAOS STAGE、OZworldの感情を動かす言葉と共によどみなく暮れていった。
<セットリスト>
01.畳-Tatami-
02.Peter Son
03.UTAGE3.0
04.弥栄LIT(feat. Chico Carlito)
05.ARIGATO
06.GEAR 5
07.369(feat. Awich)
08.おばーの時計
09.NINOKUNI
10.IROCHIGAI
文:田島諒
写真:かわどう