bacho 重く深い言葉の数々に心を溶かされて

  • 2024年6月29日
  • 0629
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この2日間を通して、ラインナップにbachoの名前が入っていることが実にDEAD POP FESTiVALらしいと思う。コンセプトの根底に“壁を壊す”という概念を持つDPFだが、その壁というのは、ジャンルだけではなくアンダーグラウンドとオーバーグラウンド、インディーズとメジャーといった、見えにくい垣根も示しており、bachoという姫路のローカルバンドが出演することには重要な意味がある。だって、この後にCAVE STAGEに登場するのは、あのHYDEなのだから。そんなタイムテーブル、後にも先にも今日しかないでしょう。

bachoのDPF出演は2017年以来、2度目。GODRiの地元バンドシーンの先輩にあたる。2002年より活動を続ける姫路発ハードコアパンクバンドであり、ローカルを大事に活動を続ける生粋のバンドマンである。今日、北畑欽也(Vo/G)はLOCALとデザインされたTシャツを着用していたが、そこのところにも勝手に意味を考えたりした。そもそもは昨年のDPFにもオファーされていたそうだが、どうしてもスケジュールが合わなかったため今年のDPFへの出演となったそうだ。

30分のライブは全6曲。どれもbachoを代表する楽曲だった。bachoが奏でる音楽の魅力は、メロウな演奏と強く一定のリズムのアンサンブルに、欽也が叫ぶように歌う日本語詞だ。

人の感情の根源的な部分を刺激するライブは、まるで強い筆跡で書かれた手紙のように心を揺さぶる。bachoを初見のオーディエンスでも、知らないうちに身体が揺れたり、涙腺を刺激されてしまうのは、そういう言葉の強さを持っているからだ。

ライブがスタートし「大いなる助走」、「萌芽」と演奏が進む。決してモッシュやダイブを煽るような曲ではないにも関わらずリフトやダイブが巻き起こっていたのは、彼らがbachoの音楽に感情が突き動かされたからに他ならない。

3曲目「決意の歌」では中盤で<このままいつか 終わるのは嫌だ このままいつか やめてしまうのは嫌だ>と歌われる。2010年に発表された曲であり、当時から聴いているが14年経った今聴いても、なぜか共感できる部分がある。そのように欽也の歌詞は、まるで自分も体験したり考えたりしたことがあるような心の底を吐露して希望に繋げる。だから、今日のCHAOS STAGEにもライブが進むにつれて、いっぱいの拳が上がっていくことになったのだ。

4曲目「Boy Meets Music」はディレイのかかったギターの音色が昼過ぎの東扇島東公園に響き渡って実に心地よい。

つづく「全てはこれから」において、高永和裕基(Dr)の大きく一定のリズムに合わせて、三浦義人(G)と伊藤知得(Ba)が同じ動きで身体を動かすアクトをしており、それに合わせてオーディエンスも身体を揺らしていたのだが、これはヘッドバンキングとはちょっと違う。彼らの音楽性のルーツにはenvyなどの激情ハードコアと言われるジャンルがあり、同時にbachoの地元の先輩バンドにはNitro Mega Prayerとう同ジャンルにおいて非常に重要なバンドがいる。そういったシーンにおけるライブアクトである。

この辺りの音楽も、音の波に揺られるように乗れる音楽なので気になる人はチェックしていただきたい。

閑話休題。最後に歌われたのは「最高新記憶」。「みんなで歌おうぜ」という欽也の呼びかけに合わせて<更新する未来 最高の新記録>とシンガロングした。

ディストーションがかかっていなくとも重く深く猛々しい。

本日もbachoに感服いたしました。

<セットリスト>

  1. 大いなる助走
  2. 萌芽
  3. 決意の歌
  4. Boy Meets Music
  5. 全てはこれから
  6. 最高新記憶

文:田島諒
写真:半田安政