「ようやくここまできた!」これこそHEY-SMITHのパンクロックショウ!

  • 2023年6月24日
  • 0624

解放されたDEAD POP FESTiVALにおいて、彼らを止めるものは何もない。まさしく、この瞬間を、この場にいる誰もが待ち望んでいたことでしょう! HEY-SMITHによる掛け値なしの屋外パックロックショウ! まさしく最&高のひと言しかなかったでしょう! この感動は実際に目の当たりにしないと絶対に伝わらないのだが、できるだけ起こったことだけを忠実に記しておきたいと思う。

HEY-SMITHを待ち望むフロアのソワソワ感は激しく、リハ前からCAVE STAGEの前方エリアはかなりの割合で埋まっていた。空が夕陽に近づくと同時にライブスタート。モニターにHEY-SMITHのアー写が掲示されるだけで、大きな歓声が起き、前方フロアのあちこちにリフトが大発生した。いつものSEが流れ、これまで以上に鬼気迫る勢いでステージに登場したHEY-SMITHのメンバーを、フロアは割れるようなハンズクラップで迎え、猪狩(Gt,Vo)の「きたぜ、DEAD POP!」と掛け声から、いきなりの「Endless Sorrow」へ。以降、この日のセットリストは攻めに攻めた内容になっており、飛ぶか踊るかしか許されないような、まさしくモッシュとダイブという荒ぶるピットへ捧げる内容となっていた。

2曲目「2nd Youth」を終えてから、「まず最初に言わせてくれ! DEAD POP FESTiVAL、開催おめでとう! 大変な3年間だったけど、お前ら、よくここまできた! お疲れさん!」と、猪狩が今年もDEAD POPに遊びにきたオーディエンスを迎えた。そこから、コロナ禍におけるライブ展開の仕方に、MAHとは少し考え方の違いがあったという話を踏まえ、「それでも、パンクロック・ラウドロックシーンを進めていきたい、愛したいという気持ちが一緒だった」と、この3年間を振り返る内容を話し、ようやくここまで辿り着いたことを笑顔で祝した。
「やっと、ここまでこれた! 2023年、トリ前に選んでくれたことにリスペクト! ありがとう! 普段なあやらないけど、今日はこのバンドのTシャツでやります!」と、自身が着ているSiMのTシャツを掲げる猪狩。ステージに出てきた瞬間に、おやっ? と思ったのだが、猪狩がSiM Tシャツを着ていたのは、SiMに向けたリスペクトの表現であり、“解”を掲げたDEAD POP FESTiVALへの喜びを表明していたわけだ。

こんな話をされてしまっちゃあ、もうオーディエンスはさらにアガっていくしかない。「自分のやりたいことをやれ!」という叫びと共に放たれた「Be The One」、「Fellowship Anthem」、「We sing our song」の盛り上がりは半端なく、前方ではリフトからのダイブ、後方ではそこら中にサークルピットが発生するという事態となり、DEAD POP FESTiVALが、壁と天井のないライブハウス状態に!

後半、新曲として披露された「Into The Soul」は、心地よいビートに乗せたホーン隊の渋みあるメロディがたまらないスカパンクチューンであり、夕暮れのDEAD POPをムーディに彩る1曲でもあった。
再びライブは進み、MCで、前半と同じくコロナ禍におけるMAHとの考え方の相違についての話をした猪狩。でも「何度も話し合ってきてよかったと、今この瞬間思っています」と、過去を振り返った。そして、オーディエンスに対しては「オレらバンドだけじゃなくて、パンク、ラウドを愛しているお前! シーンを一緒に作ってくれてありがとう!」と、戦友に向けるような話し方をして、友人へ捧げる歌「Don’t Worry My Friend」に。ラストはお待ちかね、「ビルド・アンド・デストロイ! 何もかもぶち壊せ!」の言葉から「Come back my dog」で、ここまでのDEAD POP FESTiVAL 2023 最大のモッシュピットを生み出し幕となった。

猪狩が度々口にしていた“考え方の相違”と言うのは、皆様ご存知の通り、モッシュやダイブに対する考え方のことである。この3年間はパンク、ラウド好きの我々にとっては、望まない戦いと葛藤の日々であった。しかも、終わりが見えず、我慢することに何の意味があるんだろう? と不安になる瞬間があった人もいたはず。なんだか閉塞感に満ちていて、誰かを非難しなくてはいけないような空気が流れているような時代だった。そうした有象無象のイヤなものが、なんか憑きモノのようなものが、すべてどっかに飛んでいってしまったんじゃなかろうか。解き放たれたDEAD POP FESTiVALにおけるHEY-SMITHのライブを見て、晴れ晴れとした思いになった。
空をすっかり夕暮れ。不意に涼しげな風が通り抜け。間もなく、“解”の儀を終えたSiMがCAVE STAGEに降臨する。

<セットリスト>

01.Endless Sorrow
02.2nd Youth
03.Be The One
04.Fellowship Anthem
05.We sing our song
06.Free Your Mind
07.Drug Free Japan
08.Over
09.Into The Soul
10.Inside Of Me
11.Don’t Worry My Friend
12.Come back my dog

文:田島諒
写真:鈴木公平