CHAOS STAGEの“解”一発目を託されたのは、DPF初出演となるKUZIRA。ステージに登場すると、末武竜之介(Vo, Gt)が曇り空を切り裂くようなハイトーンボイスで「Backward」を歌い始める。そこへ熊野和也(Ba, Vo) のベース、シャー😀(Dr)のドラムが加わると、CHAOS STAGEにもモッシュ&ダイブが解き放たれた。
人懐っこいポップさとメロディアスなボーカルが印象的な彼らだが、同時に泥臭さと貪欲なまでの闘志も持ち合わせる。2015年の「DEAD POP FESTiVAL」にお客さんとして遊びに来ていたというKUZIRA。当時コピーバンドを組んでいた彼らは、DPF会場内に用意されている楽器体験ブース「Studio DxPxF」で、演奏をするか逡巡していたが、結局チキって演奏できなかったそう。そんな彼らが、KUZIRAとしてオリジナル曲を作り、ライブバンドに憧れ、「ライブバンドに認められたくて、何百本もライブハウスでライブをしてきた」(末武)。そうして2023年、“解”と冠されたDPFで初日CHAOS STAGEの一番手を任されたのだ。そんなの気合が入らないわけがない。曇り空もいつのまにかすっかり青空だ。
「デッドポップ、拳貸してくれ!」と熊野が言っていたが、フロアを信じ、キッズ達と共に自身のライブを作ってきたのがKUZIRAだ。「In The Deep」ではフロア後方に大きなサークルが出来上がり、マイナー調の「Clown」「Muggy」が続けられればそこらじゅうでスカダンスの応酬。末武が「(CAVE STAGEでセッティングを行なっている)スサシに聞こえるくらいバカでかい声で歌ってくれよ」と呼びかけてから始まった「A Sign of Autumn」では、末武が伸びやかなボーカルを聞かせたあと、“バカでかい”シンガロングが広がった。
改めてライブバンド・SiMに認められてこのステージに立てていることを「すげーうれしいです!」と喜んだ末武は、こう続ける。「『Studio DxPxF』で、俺たちみたいにチキらずやっていってください。そしたら何年後かに(デッドポップのステージに)立てるから。こうやって想いはつながっていくんだ」。
そして、Ken Yokoyama「Let The Beat Carry On」のテーマである“つなぐ”からバトンを受け取り紡いで完成させた「Spin」、そしてラストナンバー「Snatch Away」へ。末武は声を枯らすほどに渾身の力で歌い、熊野はマイクをステージ前方ギリギリまで動かしKUZIRAを見るために集まった遠くのオーディエンスへも音を届ける。シャー😀も立ち上がり、うれしそうにフロアを見ながら全力でプレイ。その姿に憧れて、きっとバンドを始める人がいる。そう思わせてくれるような、頼もしいステージだった。
ちなみに「Studio DxPxF」も、今年は2019年以来“解”禁となっていることを、最後に付け加えておく。
<セットリスト>
01. Backward
02. In The Deep
03. Blue
04. Clown
05. Muggy
06. Pacific
07. A Sign of Autumn
08. Spin
09. Snatch Away
文:小林千絵
写真:半田安政