昨年はCHAOS STAGE、今年はCAVE STAGE。どデカいステージにマイクとターンテーブル、現場で磨き抜いてきたスキルを手に乗り込んできたのがCreepy Nutsだ。スタート前から注目度は桁違いに高く、R-指定、DJ松永の2人が姿を見せれば、湧き上がる大拍手がSEのように鳴り響く。そんな期待感を受け取ったのだろう、助走なんていらないと、まずは「合法的トビ方ノススメ」をフルスロットルでぶちかます。
当然、R-指定はキレッキレのラップを放ち、DJ松永は巧みにターンテーブルを操りながら、声を飛ばし、いいじゃねえかと言わんばかりの表情で客席を見渡していく。とは言え、それぐらいじゃ満足はしない彼ら。「もっとイケるんじゃねえの？」とR-指定は煽り、より高みを目指していくのだ。
「真っ昼間やけど」というR-指定の言葉からキメが気持ち良すぎる「よふかしのうた」を鳴らすと、これもまた絶景が広がっていく。オーディエンスが掲げる両手が揺れ、はためくフラッグのように見えるのだ。
高らかな歌い出しが印象的な「2way nice guy」では「いつもより多めに回しております」とR-指定がツッコむほどDJ松永のスクラッチも冴え、前半戦からとんでもない盛り上がりとなっていく。
ここでひと呼吸。ペットボトルの水がもはや白湯になっていると2人で笑いながら、DJ松永の「2015年のこのフェスでシャトルバスのプラカードを持つバイトをしてた」という思い出話を受け、R-指定が「ヒップホップは自分の言葉、スキルで成り上がるスタイル。ブリンブリンはないけど、誘導からこのステージでかましてるのも十分なヒップホップ！」と自らのステップアップを口にする。ショートカットや裏道など使わず、着実に歩みを進めてきたことに加え、描く世界観も広がり、全方位にメッセージを届けられる存在となった彼らだからこそ伝わってくる言葉だ。
自らとロックバンド、表現方法は違うけれど根っこにある熱い気持ちは同じなんだと突きつけて「Bad Orangez」、R-指定が全身を使ってリリックを解き放ち、DJ松永も会場の熱気を反映させるようなプレイを見せた「かつて天才だった俺たちへ」と続き、高まるムードは天井知らず。＜シカトでかまそうぜ金輪際＞というフレーズも強く胸に響く。
トラックの強度も上がり、より熱を持ってドロップしたのが「パッと咲いて散って灰に」。誰かを蹴落として勝ち進んだからこそ、そこに生じる責任や覚悟を歌ったこの曲をエネルギッシュに、時折祈るように放つ姿も印象的だった。
そして、ここで改めてこのコロナ禍をR-指定が振り返り、「いろんなジャンルの人が頑張った、模索した2年間。まだしばらく続くだろうけど、(みんなも)表情や眼力でレスポンスを返せるようになった。これは大きな収穫だ」と語り、コロナ禍が明けたとき、このスキルを活かせばお互いに体験したことがないようなライヴが味わえるはず、今はしゃがむ時間なんだと話す。つまり、「未来に向けて伸びしろしかないんですよ！」とラストナンバーとして「のびしろ」をセレクト。決して逃げず、葛藤を抱えながらも物事を正面から受け止めてケリをつけるスタンスが投影されたような曲の力も凄まじく、最高潮の状況を作り上げていく。
ライヴが終わり、DJ松永が「暑さでレコードが曲がった」と笑っていたが、それは気温だけが原因じゃないように思えるほど、観る者の胸を熱くたぎらせるステージだった。
＜セットリスト＞
1. 合法的トビ方ノススメ
2. よふかしのうた
3. 2way nice guy
4. Bad Orangez
5. かつて天才だった俺たちへ
6. パッと咲いて散って灰に
7. のびしろ
文：ヤコウリュウジ
写真：鈴木公平