「来年は本当のモッシュをしよう」SiM、未来への希望に満ちた初日に幕

  • 2022年6月25日
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去年の「DEAD POP FESTiVAL」で、「お前らとここは、俺らが絶対守ってやるから」と残していたSiMが、今年も「DEAD POP FESTiVAL」のトリとして帰ってきた。しかも、TVアニメ「進撃の巨人」The Final Season Part 2のオープニングテーマ曲「The Rumbling」を携えて。おなじみのサイレンとともに登場したSiMの4人は、真っ赤な照明に照らされたステージで、1曲目に「The Rumbling」を披露。偶然にもCHAOS STAGEのトリを務めたヒグチアイが「進撃の巨人」The Final Season Part 2のエンディングテーマ「悪魔の子」でアクトを結び、続くSiMが1曲目に、原作を読み込んで書き下ろしたという同曲を披露する。イントロから観客の期待を誘い、ダヴィなサウンドと情感あふれる切実な表情で一気に「進撃の巨人」の世界観へと染め上げた。

「進撃の巨人」のムードを振り切るように「デッドポップ行こうぜ!」とMAH(Vo)が声を上げ、バンドは「CAPTAiN HOOK」のスラップベースとシャッフルのリズムで会場を揺らす。さらに「暑いのぅ」とつぶやいたMAHが「今開けたばかりで口を付けてない」と説明したペットボトルから水を撒く。すると“暑さを和らげたんだから踊れるでしょ?”と言わんばかりに、間髪入れずに「SiCK」を投下。観客のテンションも一気に引き上げられ、ツーステップに興じるオーディエンスでいっぱいになった。

3曲を終えるとMAHが「毎年夏のロックフェスのスタートがこのデッドポップと言っても過言ではないと思っています。この2日間がどんな2日間になるのかによって、来週の京都大作戦につながっていくと思うし、その先……“その向こうへ”(と、しっかり10-FEET・TAKUMAのモノマネも)、ハジマザもそうだし、いろんなフェスに……」とロックフェスの主催者としての発言を……と思いきや、「ってどーーーーでもええ!」と一蹴。「このフェスはSiMが友達とか先輩後輩の名前を使ってみんなを川崎におびき寄せて、腹に響く低音でお前らを踏みにじるだけのフェスです」と、一瞬で悪魔の顔に。そうそう、SiMはこうでなくっちゃ。「甘い蜜におびき寄せられてきたからには覚悟はできてるだろ?」と焚きつけると、キラーチューン「KiLLiNG ME」でオーディエンスを存分に“踏みにじって”いく。

「あのSiMもメンバー全員が父になった」と前置きしてから始まった「FATHERS」では、MAHが父親になったときに作った同曲を、4人共が噛みしめるように穏やかな表情になった。ライブハウスから始まったイベントが野外フェスになり、世界が疫病に怯え、“あのSiM”が全員父親になり。どんなときもMAH、SHOW-HATE(Gt)、SIN(Ba)、GODRi(Dr)の4人はSiMの音楽を奏で、SiMのライブを見せてくれる。会場に来ている人一人ひとりの人生にも、きっとそうやってSiMの音楽が寄り添い、共に歩んできているのだろう。

またこの日のステージでは「The Rumbling」のヒットを受けて、「ちょっくらアメリカに行ってきます」と、アメリカでの活動も始動させることを発表。「ごめんな、遠くに行っちゃって。チャンスをつかむ力ってすごいよね」と不敵に高笑いをしたり、突如新曲を披露しようとMAHが曲紹介するもSHOW-HATEが「いや、ちょっと待って」とあわてて止めたりと、彼らなりのユーモアを織り交ぜていたけれど、いや、普通にSiMのチャンスをつかむ力はすごいし、何よりもバンドの未来が明るくてワクワクさせてくれることがうれしかった。さらにMAHは、「こういう感じのデッドポップは今年で終わりっぽいなって、来年からはいろいろできるんじゃないの?って匂いがプンプンする」と、DEAD POP FESTiVALの未来にも期待をうかがわせた。

そんなDEAD POP FESTiVALの未来を思わせる場面は「f.a.i.t.h」にも。コロナ禍で生まれた“前髪モッシュ”を、MAHが「これも今年で最後にしよう。来年は本当のモッシュをしようぜ」と高らかに宣言。MAHも観客も、思う存分、最後の“前髪モッシュ”をしてみせた。そして最後の「BASEBALL BAT」では「今年はまだ歌えないから俺らが歌うよ」とMAHが言うと、ステージ袖に控えるバンドマンを呼びこみ。ステージ上にはMAHが“名前を使った”という友達や先輩後輩が勢揃い。昨年には見られなかった賑やかなムードで、大団円を迎えた。

昨年は戦っている最中だったDEAD POP FESTiVAL。「俺らが絶対守ってやる」との言葉通り、SiMとSiMの仲間とファンで戦い、守った結果が、この日に、そして未来につながっている。

 

<セットリスト>

  1. The Rumbling
  2. CAPTAiN HOOK
  3. SiCK
  4. KiLLiNG ME
  5. Fall In Love With You
  6. FATHERS
  7. EXiSTENCE
  8. Blah Blah blah
  9. f.a.i.t.h
  10. BASEBALL BAT

文:小林千絵
写真:鈴木公平