「この景色が帰ってまいりました」仲間たちとの再会を祝しながら作り上げた幸せな光景

  • 2021年6月27日
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そりゃあ声を出せたらもっと楽しいと思うし、モッシュできたらもっと盛り上がると思う。しかし、今日、「大声で(大声を出すつもりで)突き上げてみろ!」「クラップで叫ぼう!鳴らせ!鳴らせ!」というダイスケはん(キャーキャーうるさい方)の言葉に応え、観客全員が懸命に拳を突き上げ、手を打ち鳴らす光景を見ていたら、もうそれだけで十分に楽しいんじゃないかと思えてきた。ステージではマキシマム ザ ホルモンの4人が熱度満点の演奏に加え、あの手この手を使って、我々をとことん楽しませようとしている。

その思いは「よかったら、みなさんも心の中で歌ってください」とナヲ(ドラムと女声と姉)が呼びかけ、「パトカー燃やす~卒業~」という激レア曲から始まったセットリストからもしっかりと窺えたが、観客を楽しませるためなら、この日、ステージを共にした仲間のバンドも積極的にネタにしてしまうところもホルモンらしい。

「今日の降水確率知ってる? 90%! 聞いてた話と違うんですけどぉ。あの人たち(=SiM)、悪魔って言ってるけど、普段行いがいいんだね。MAHは元生徒会長。ビジネス悪魔だね(ここで頭を抱えるMAHの姿がビジョンにヌカれる)」とナヲにイジられたSiMをはじめ、この日、ホルモンの餌食になったのは、猪狩秀平とYujiが言った「ありがとう」が偶然ハモってしまったことをダサいと言われたHEY-SMITHと、「和田アキ子とCrossfaithのゴリラ(=Koie)のユニットだと思った」とネタにされたCrossfaithとあっこゴリラたち。

それがイヤな感じにならないのは、ホルモンのメンバーの人柄によるところも大きいと思うのだが、「この景色が帰ってまいりました」とナヲが言ったようにフェスという現場で仲間たちと再会できた歓びを隠しきれず、はしゃいでいることが伝わってきたからだ(実際に顔を合わせなければ、イジることさえできないじゃないか)。

中盤、ノンストップで繋げた「What’s up, people?!」と「ハングリー・プライド」の2曲でマキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)、ダイスケはん、上ちゃん(4弦)、ナヲの4人が一丸となって生み出す強靭なグルーブと、それぞれのスキルを見せつけると、そのシリアスな流れから一転、「my girl」のファンキーな演奏で観客をジャンプさせる。《CHITSU!CHITSU!》《VA・GI・NA!VA・GI・NA!》の連呼に合わせ、飛び跳ねる(通称CHITSUジャンプ)観客たちの、なんと楽しそうなことか。

その後、楽屋に用意されていたフェスのTシャツがL1枚とXL3枚だったことに「SCANDALもそうなの?え、(SCANDALは)M? 冗談じゃねえよ!」(ナヲ)とSCANDALにもカラみつつ(?)SiMにクレームをつけてから、最後に披露したのが「恋のスペルマ」。

「麺カタコッテリ」のコールに合わせ、いったん座らせた観客を一斉にジャンプさせる恋のおまじないから演奏になだれ込んだ後は、観客もどう盛り上がればいいのか、しっかりと心得ていたようだ。ドラマチックに変化するパート、パートに合わせ、手拍子、ダンス、ワイパー、そしてヘドバンとバンドの演奏にがっつりと応えながら、大きな熱狂を作りあげていった。

何かも忘れて、そこにいる誰もがポップなロックンロールに身を任せるその光景を見ていたら胸が幸せな気持ちで満たされていった。

「この景色が帰ってまいりました」

ナヲがさっき言った言葉が蘇る。誰もがこの幸せな景色を待ち焦がれていたに違いない。

<セットリスト>
1.パトカー燃やす~卒業~
2.恐喝~kyokatsu~
3.What’s up, people?!
4.ハングリー・プライド
5.my girl
6.恋のスペルマ

文:山口智男
写真:Takeshi Yao