DEAD POP FESTiVALが東扇島で開催されるようになって、今回で10回目(なはず……)。その歴史ある地獄の宴に7度の出演を誇るバンドが、京都からの使者こと、10-FEETだ。幾多の試練や困難を乗り越えながら成長し続け、25年以上にわたりシーンの最前線を走ってきた3人が再び東扇島のステージに。初日のオープンニングアクトから数えれば、22バンドが熾烈を極めるライブを繰り広げてきたこともあって、フロアは煮えたぎっている。さあ3人は、この地獄の鍋をどのように調理するのか。
お馴染みのSE、ドラクエ3の曲に合わせてフロアには10-FEETのタオルを掲げるオーディエンスで大草原が広がる。この景色をステージから観たらさぞ感動するだろうなと考えていると、ステージにKOUICHI(Dr/Cho)、NAOKI(Ba/Vo)、TAKUMA(Vo/Gt)の3人がステージに現れた。「よっしゃいこか」のTAKUMAのかけ声でライブが開幕する。1曲目は「goes on」。いきなりかましてくれる。スピーカーからは巨大な獣の心臓の音のようにNAOKIのベース音と、KOUICHIのドラムの太いビートが放たれ地面を震わせる。そしてTAKUMAの歌声がみんなの大歓声を切り裂きながら、クラウドサーフのウェーブが広がるフロアを満たしていく。10-FEETだからこそ鳴らせる3人だけの音が紡がれていく。フロアからのシンガロングが翼を広げるかのようにステージから空へと飛び立っていく。続くはお馴染みの「RIVER」(鶴見川&多摩川Ver)を投下してからの「ハローフィークサー」に「第ゼロ感」。ソウルフルなダンスナンバーに、ダイブやサークルモッシュでと、思い思いに10-FEETサウンドに酔いしれている。「DEAD POP、ぶっ飛べ!」のNAOKIのシャウトがあったように、ライブはどんどんと加速していく。
このままどこまで行ってしまうのだろうと思っていたところでMCに。TAKUMAがSiMへの感謝と、世の中にあふれているくだらない誹謗中傷に負けるなよのメッセージとともに、「その向こうへ」を披露。心に響くヘビーなサウンドとTAKUMAのソウルフルな歌声が胸を打つ。10-FEETの音楽は圧倒もされるけど、そんなヘビーな強さだけじゃなくオーディエンスに寄り添う優しさだってある。それぞれ自分に合った音を見つけては、熱狂的に踊ったりもするし、時には泣きそうな顔になってみたりもして、それぞれが感じたままにリアクションを返していて、さまざまな感情がフロアにあふれている。この10-FEETならではの雰囲気を体中で感じていたい。フロア前方で暴れたっていいし、無言で目を閉じて聴き入ったっていいし、拳を突き上げてもいい。迷惑さえかけなければ、どんな反応でもいいのだ。わかっていることは、この空間にいる者すべてが同じように、この時、この瞬間を脳裏に焼き付けようとしている。
私達は10-FEETの音に完全に受け身じゃない。音や言葉の中から、何かを掴み取りたいのだ。きっとアクションを起こせば起こしただけ、何かが見つかるはず。ラストは「ヒトリセカイ」からの「VIBES BY VIBES」でフィニッシュかと思いきや、時間がわずかに残ったということで「SHOES」! つくづく10-FEETらしいめっちゃ優しくて、そしてとってもキュートなライブだった。なぜ10-FEETの曲は、こんなにも多くの人の心をひきつけるのだろう。きっとみんなの心の声を代弁しているからなんだと思う。何度も観ているのに今日も泣き、笑わされてしまった。泣いたといっても、悲しいんじゃなく、嬉しくてただ嬉しい。生きていてよかった。今日もまた観られてよかった。そう思わずにはいられない最高のライブ。今年もありがとう、10-FEET!
<セットリスト>
01.goes on
02.RIVER
03.ハローフィクサー
04.第ゼロ感
05.その向こうへ
06.ヒトリセカイ
07.VIBES BY VIBES
08.SHOES
文:相沢修一
写真:かわどう