DEAD POP FESTiVALに集まるオーディエンスであれば、SiMとanoの繋がりはご存じだろう。今年の3月にSiMの“PLAYDEAD” WORLD TOUR SEASON 1 新潟公演で2マンライブを行うなど、ライブハウス仲間同士である。
そんなanoがDPFに出演すると決まったときは『メインステージが大変なことになっちゃうぜ』と思ったのだが、まさかのCHAOS STAGEに登場するということで、えらく驚いた。そして、想像はしていたものの、やはりThe BONEZのライブが終わる頃にはCHAOS STAGE前のフロアがパツパツ、その人波はCAVE STAGEの方まで伸びており、もうヤバいじゃん、と思った。そして、実際にライブはヤバ過ぎた。おそらくDEAD POP FESTiVAL 2024でもっとも自由で笑顔溢れるカオス空間が出来上がっていた。そのカオスはanoの音楽ながら体現できるもの。大人から子供までステージに釘付けになって心をグイっと握られてしまうような魅力がanoの歌、シャウト、アクト、立ち振る舞いのすべてから溢れてでていた。肩車されたキッズはanoに向かって一生懸命に手を振っていたが深く同意である。
ライブ開始時には小雨がパラつき、テレビのチューナーを合わせるようなノイズから始まるSEが流れる空間はどこか幻想的。そんな中にスッとanoが登場した瞬間はハッとさせられるような高揚感があった。
ライブはソロデビュー曲の「デリート」でスタート。続いて「Peek a boo」と初期の楽曲をどんどん歌い上げる。＜死＞という単語がanoのリリックによく登場するが、この2曲にはそれが印象的に歌われていて、“感謝の「死ね!」”を叫ぶSiMのDPFでは、特別にマッチしているように感じる。そして音源とは比べものにならないほどにanoがシャウトしまくる! DPFを意識してのことだったのかもしれないが、その声が東扇島東公園中に響き渡り、完全にDPFがano色にロックされてしまったと感じた。
個性を歌う「普変」では大量のクラウドサーフがあちこちから巻き起こり、その様子にanoも「ニヤリ」。中盤では自ら前方のピットに突っ込んでいったが、そこ目掛けてダイバーが押し寄せてくる。anoはすぐに人だかりに飲まれて姿が見えなくなったが、それでも歌声は1秒も途切れることなく続いていた。これ、ハードコアバンドのライブじゃないの? と思ってしまうほどの光景。
「はじめまして、anoです。よろしゅう。DPF、出れて嬉しいです。ウワサ通りですなぁ」と激し過ぎるライブに息も切れ切れに挨拶。その後、DPFのHPに掲載されている事前アンケートで、気になるアーティストにHYDEが＜あえていうならanoちゃん。＞と回答していたことへの喜びを語りつつ「（私のことを）バラエティで知っている人もアーティストとして知っている人もいるかもしれないけど、今は関係ない。ごちゃごちゃに暴れていってください」という内容のMCから、ダンサーをステージに呼び込んで、めっちゃ踊れる「猫吐極楽音頭」へ。バウンスするCHAOS STAGEに「お前らの力を見せてみろ!」とガンガン煽るano。その言葉に誘われるように最後の2ビートパートではサークルモッシュが回転しまくっていた。
イントロで大歓声が起こった「ちゅ、多様性。」では、青いチャイナドレスを着用したチャレンジャーがダイブして飛んでいき、フロア後方から差し伸べられる合いの手も完璧。曲間ではファンがブブゼラの音のような大声をあげて声援をステージに送る。（アレは何て叫んでいるのだろう?）まさしくカオス&ポップ。anoにしか構築できない時間である。
冒頭に記述したSiMとの2マンの際に「やりたかった曲を今日は歌えます」という言葉で何が歌われるのかと思えば、上手から幾田りらが登場!! やるのかな? という期待はあったが、まさかに本当にやってくれるとは、「絶絶絶絶対聖域」! しかもCHAOS STAGEで! 最後には、バンドメンバーが去った舞台でもう1曲のコラボ楽曲「青春謳歌」をanoと幾田りらの2人で。実に実に豪華な空間であった。
アーティストanoが必死に歌い上げる光景から感じるのは、自分らしさを大切にすること、生きる道を探すこと、ストレートにポジティブな内容を歌わずとも、そう感じさせる。今日のこのライブでパワーをもらった人は数え切れないことでしょう。
事前アンケートでanoは『悪魔に生まれ変わったら何がしたいですか』というクエスチョンに対して「猫以外全員倒す」と回答した。
猫になりたい人生だった。
＜セットリスト＞
- デリート
- Peek a boo
- 普変
- 猫吐極楽音頭
- ちゅ、多様性。
- 絶絶絶絶対聖域 / ano feat. 幾田りら
- 青春謳歌 / 幾田りら feat. ano
文：田島諒
写真：半田安政