いつだって時代を変えるのは、その時には理解もされないような新しいものだ。

  • 2019年6月23日
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初の屋外開催だった2015年以来の出演となるBRAHMAN。その2015年のアクトでTOSHI-LOWは「俺達も、昔は『そんなのナシだ』って言われ続けた。だけど、いつだって時代を変えるのは、その時には理解もされないような新しいものだ。新しいフェス、新しい時代の幕開け、おめでとうございます」という旨の言葉をSiMとDPFに贈った。世界の土地土地で歌い紡がれる土着の民謡を血肉にしてハードコアと融合させたBRAHMANと、レゲエとパンクというレベルミュージックの極点同士をひとつに繋いで鳴らすSiM。その音楽のスタイルと生まれた年代こそ違えど、通底しているのは、なぜいつか死んでしまうとわかっているのに自分はこんなにも必死に生きるのかと無限回廊の中で問い続けて、自分だけの居場所と安住を求める心の旅を繰り返して(BRAHMANの音楽はまさにこの精神性から生まれているのだと思う)、だからこそ気に食わないことや日々を傷つけるものに中指を立て続けるという姿勢である。言うまでもなく、パンク、ひいてはレベルミュージックの根幹がそこにある。

ステージに登場したTOSHI-LOWはBad BrainsのTシャツを着ていた。レゲエとハードコアを融合したオリジネイターとも言えるバンドの名を胸に掲げていることはそのまま、こうしてSiMが築いたステージまで受け継がれてきたロックのバトンをBRAHMAN自身も引き受け、繋ぐ意志の表れだろう。大事な仲間の存在と自身の孤独の払拭をゆったりと歌い上げる“今夜”が1曲目に披露されたのも、BRAHMAN自身が受け継いできたロックバンドへのロマンと夢が多くの仲間との絆になっていることをそのまま表現したものだと受け取れる。丁寧に、大きな歌を解き放っていくTOSHI-LOWの目が温かく優しい。展開は緩やかながらも重厚なアンサンブルが、じっくりと熱を帯びていくのが目に見えるようだ。

立て続けにHEY-SMITHのホーン隊を呼び入れてコラボレーションヴァージョンで鳴らされた“怒涛の彼方”と“BEYOND THE MOUNTAIN”では、獰猛な声の掛け合いで昇っていくハードコアが、ホーンの音色によって煌めきとスケールをより一層増している。『梵唄 -bonbai-』以降に顕著だが、今BRAHMANの音楽は、4人だけの世界から無限の広がりと絆を鳴らすものとして変貌しているし、だからこそ何も拒まず、BRAHMANのほうから仲間をすっと迎え入れるのだ。激情的に昂りながらもじっと前を向いて夜明けを願い祈るようにして鳴らされた“AFTER-SENSATION”にしても、消えることのない嘆きや悲しみを叫ぶ最初期の楽曲“時の鐘”にしても、そしてそのすべてを「赦せ」と叫んだ“不倶戴天”にしても、ひたすら獰猛なのに、目の前の世界と目の前の人に真っ直ぐ向かうアクトになっているのがいい。

「復讐の時がきた。ここ数年はフェスでSiMと順番が近い時があって、俺らが先にやる時は、SiMに対していい感じのことを言うわけよ。それでもSiMは、大体『関係ねえ』って言うの。BRAHMANの客は年齢も高くて、体力もねえんだろってさ。でも、ちまちま言い返したってしょうがねえと思って言い返してこなかったんだよ。なぜなら、(DEAD POP FESTiVALという)SiMの一番のホームでガッツリ言い返すべきだろうって。だから、SIM、DEAD POP、ひと言言わせてもらう。……呼んでくれてありがとう」

そんなTOSHI-LOW節で笑いを誘うひと幕もあったが――。

「言い返すわけねえじゃん。だってあいつ、楽屋ではすげえいいやつだもん。これからもあいつは『馬鹿野郎、関係ねえ、死ね』って悪態つくだろう。でも、そのたびにPTAのお母さんみたいな目で見てくれ。あんな悪魔みたいな見た目してるけど……あいつもプロレスが好きだけど、俺もプロレスが好きで。でも昔、スターのプロレスラーにサインをもらいに行ったら、冷たくあしらわれてさ。それで悪役のレスラーにサインをもらいに行ったら、『坊主、あっち行かなくていいのか』って言われたんだけど、すごく優しくて。その時から、俺は見方を変えたんだよ。善と悪って見た目じゃわからねえ。本当の悪ってのは、善人の顔をしてやってくる。儲かります、便利ですって顔してさ。だけど俺らは、鼎っていう尺度を持ってる。さあ、何をとる?」

そう問うた後に鳴らされたラストナンバーは、“鼎の問”だった。

何を選んで、自分でどう自分の意志を表して、大事な仲間の存在から目を逸らさずに目の前の世界に向き合って生きていくのか。たったそれだけだが、たったそれだけを果たす誠実さと強さだけで真っ直ぐに生きていけるのだとひたすら伝えるライヴだった。

M1.今夜
M2.怒涛の彼方
M3.BEYOND THE MOUNTAIN
M4.SEE OFF
M5.雷同
M6.AFTER-SENSATION
M7.時の鐘
M8.不倶戴天
M9.警醒
M10.鼎の問

文 矢島大地
写真 スズキコウヘイ