「主役はSiM」をわからせる一撃でDPF’25終幕

  • 2025年6月29日
  • 0629
  • SiM

真っ暗なステージから、MAH(Vo) の声。「一撃でわからす! 主役は誰!」そして始まる「Oh na na na」の声と、真っ暗闇を切り裂く爆音の演奏。

フェスの主催者は「主役は何より、来てくれた皆さんです」とオーディエンスへ最大な感謝を伝えることが多いが、ここはDEAD POP。言わずもがなSiM様が主役なのです。わかっちゃいるけど、色気のあるMAHのボーカル、ボーカルをも食うような攻撃的なSHOW-HATE(Gt)のギター、そんな両者の音をもかき消さんばかりのSIN(Ba)による爆音のベース、そして東扇島ごと揺らしてしまうほどのGODRi(Dr)によるドラムが鳴らす「Blah Blah Blah」で、改めて、そして何度でも「主役はSiM様、あなた方です」とひれ伏したくなる。「常にカッコいい最新を更新する、常に20年間で最強のSiMで居続けるつもり」と話していたが、まさにそれを一撃で証明してみせる。さらにダヴィなパートが心地よく体を揺らす「WHO’S NEXT」、伝家の宝刀「TxHxC」とこれでもかと、その主役の力を見せつけていく。

そうしてようやくMAHの口から「主役は私、SiMです」と自己紹介。「朝から元気いっぱいのお前らバカ共を見て、おかげで疲れも吹っ飛び、ここまで突っ走ってこれました。バカのみんな、ありがとうー!」と感謝を口にしたMAH。そのあと「いや、バカはまずいな」と言い淀むと、自身の息子がライブを見に来た際「なんで『死ねー』って言うの?」と聞かれたというエピソードを明かす。彼は「『死ねー』って言ってもみんなが楽しんでくれる関係を20年かけて作ってきたんだよ」と説明したそう。そんなエピソードを挟んで届けられたのは、2023年リリースの「KiSS OF DEATH」、そして今年2月リリースの「CHAMPiONS」。まさにそんな関係性を築いた先に発表した楽曲だ。彼らは、20年かけて築いてきた関係を、ここ数年で、さらにグローバルにした。今年の「DEAD POP FESTiVAL」では、Set It Offをはじめとする海外からやってきた友人に、自身の楽曲やライブだけでなく「DEAD POP FESTiVAL」も見せることができた。そして彼らに言われたのは「日本のファンはヤバい」。そう話すMAHは、うれしそうに「誇らしかったです」と胸を張った。でもさらに胸を張らせてほしいと言わんばかりに「日本が一番ヤバいってところを見せてくれ」と、世界へと大きく飛び出したきっかけとなった「The Rumbling」をプレイすれば、バカデカい声のシンガロングに、頭が外れそうなほどの勢いのヘドバンの海に。もちろんステージ上では、4人で鳴らしているとは思えないほどのスケール感と迫力で、最初の一撃で主役はSiM様だとわからせたはずなのに、まだまだわからせてくる。

「息子の耳を塞いでくれ」と、一瞬悪魔から父親に戻ったあと、また悪魔に戻り「感謝を込めて……死ねー!」で「KiLLiNG ME」でダメ押し。曲中、SHOW-HATEの代わりにギターを弾けるバンドマンを探すも、立候補者がおらず肩を落としていると、フロアから次々と手が上がる。これもまた、SiMが築いてきたフロアとの関係性であり、SiMが伝えてきたライブの楽しみ方だ。そんなSiMにすくすくと育てられたファンが生き生きとステージ上で続きを弾きライブは大団円。かと思いきや捌けずにそのままアンコールへ。「死ねー」の次は「踊れー!」、そう、「DO THE DANCE」だ。昨日からずっと遊び倒してきたはずの観客は、疲れも知らずに踊り狂う。そして最後は、花冷え。からユキナを呼び込み、「f.a.i.t.h」。残りの体力をすべて使わせると、「帰れー!」の一言で「DEAD POP FESTiVAL 2025」の幕を下ろした。

「死ねー」「踊れー」「帰れー」と言っていたMAH様だが、途中、イベントを振り返ってこう話していた。「今年もすごくいろんなメンツが出てくれました。今日はなんといってもCHAOS STAGEの新宿ANTIKNOCK感。出てるバンドたちがうれしそうに『ANTIKNOCKだ』って言っているのを見て、アツい気持ちになりました。あの中から“次は誰が……?”って、きっとバンドマンみんなぐわんぐわんに燃えていると思う。いつでも倒しに来てください。一蹴できるバンドで居続けるバンドでいられるように頑張ります」。

「壁を壊す」を合言葉に、ライブに特化したアーティストが一堂に会すイベントとして始まったDEAD POP FESTiVAL。vol.0が開催された2010年から15年経った今も、ライブアーティストたちが、プライドと自身のスタイルと、それを裏付ける確かなスキルと熱量を持ち寄ってバチバチに戦い合う場でありながら、いつの間にか横の壁だけでなく、上下の壁もぶち壊していて、同時に、その中でも主役の座を奪われまいとするSiMは、国境をも軽々と壊していた。来年は4月の開催となる。また新たな物語が始まる。

<セットリスト>
01.Blah Blah Blah
02.WHO’S NEXT
03.TxHxC
04.KiSS OF DEATH
05.CHAMPiONS
06.DiAMOND
07.The Rumbling
08.KiLLiNG ME

EN1. DO THE DANCE
EN2. f.a.i.t.h feat.ユキナ(花冷え。)

文:小林千絵
写真:鈴木公平/半田安政