川崎の地に黒夢、降臨。見せつけてくれたのは大きな背中と存在感。

  • 2025年6月28日
  • 0628
  • 黒夢

今年2月、10年ぶりに奇跡とも言える再結成を果たした黒夢。東京ガーデンシアター、ぴあアリーナMMの両公演はキャリアにおいて何度目かもはやわからない絶頂を極めた夜ではあったが、清春のデビュー30周年イヤーにおける限定復活だった為、見納めとなるはずだった。しかし、そのステージでまさかのZeppツアーを発表し、次々とフェスへの出演も発表。このDEAD POP FESTiVALはそのうちのひとつであり、現代の最前線を走るラウドバンドとの邂逅は非常に興味深かったはず。

様々な思いを巡らせていると、坂下丈朋(G)とKatsuma(coldrain/Dr)という屈強なサポートメンバーと共に、人時(Ba)、そして清春(Vo)がアコースティックギターを持って登場。万雷の拍手の中、清春がアコギをかき鳴らし、そのままバンドインして「少年」をまずは挨拶代わりにと食らわせていく。人時とKatsumaによるたしかなグルーヴ、坂下の頼もしいプレイに合わさるのが清春の圧倒的なヴォーカルだ。遠くまで見渡しながら、観客へ呼びかけながらその歌声を突き刺していく。決して過去をなぞることなく、しっかりと今にアップデートされた黒夢サウンドはどこまでも痛快でしかない。

そのまま、「ROCK’N ROLL!」とタイトルコールでありながら、アジテートの意味も込めるように清春が叫び、突入していったのが「ROCK’N ROLL」。荒ぶる歌声もそうだが、ロックとしての推進力が半端ではない……という流れだったのだが、途中で清春が「今のは間違いです」とプレイを静止し、ゆっくりと自由に言葉を紡いでいく。

「みなさん、こんにちわ。私たち、黒夢と言います」と慎ましい挨拶から、「なぜか、このDEAD POP押し込まれまして。10年ぶりの活動で、不慣れなロックフェスに押し込まれてます」、「暑くないですか? 図書館とか行かなくて大丈夫?」と肩の力を抜いた言い回しで語りかけつつ、「V系と言われる中でフェスに出てるのは唯一、僕らぐらいです。そのへんの不思議さを味わってください」と思いを口にしていく。フェスだからといっても何も変わらない、いつも清春節と言っていいだろう。

そして、改めて「ROCK’N’ROLL」を鳴らしていったが、一瞬で最高到達点を記録するのが見事すぎた。キャリアがなせる技なのか、特殊能力なのか、そのあたりは何とも言い難いが、そんな怒涛の勢いの中でも清春はモニターに腰掛けて軽快かつ力強く歌い上げ、懐の深さも見せつけてくれる。焦る気持ちなど1mmもない。

深くエグるイントロから清春が絶叫し、人時のしゃがれた声や炸裂した坂下のギターソロも最高の彩りとなっていた「CAN’T SEE YARD」を投下し、一瞬だけ「C.Y.HEAD」が鳴った後、力いっぱい暴れ回ったのが「後遺症 -aftereffect-」だった。歌を遠くまで轟かせながら、マイクを投げ捨て、どうなんだ、と客席へ視線を飛ばし、そんな挑発に観客も負けじと声を上げていく。そんな熱の交換からドロップされた「SICK」の迫力は当然とんでもなかった。強烈なハードコアサウンドに色気のあるメロディーと歌声が頂点でクロスオーバーしており、ステージ上のメンバーの白熱ぶりも拍車がかかっていき、ラストナンバーとして鋭く叩きつけられたのが「Like@Angel」。そのアンセムっぷりは流石であり、観客も大きなシンガロングで応えていく。見せつけてくれたのは大きな背中と存在感。黒夢というバンドは2025年でもやはり圧倒的だった。

<セットリスト>

01.少年
02.ROCK’N ROLL
03.CAN’T SEE YARD
04.後遺症 -aftereffect-
05.SICK
06.Like@Angel

文:ヤコウリュウジ
写真:鈴木公平